日本ロボット工業会(会長=津田純嗣 安川電機会長兼社長)、製造科学技術センター、マイクロマシンセンター主催のロボット関連三団体が1月12日、都内の東京プリンスホテルで新年賀詞交歓会を開催した。
3団体を代表して津田会長があいさつをした。あいさつの概要は次のとおり。
昨今の世界経済は米国が順調な景気回復をみせる中、中国の景気減速をはじめ、新興諸国では景気回復に弱さがみられる。わが国経済は政府の経済政策効果もあり、全般的には緩やかな回復基調にある。ロボット業界においては一昨年の安倍総理のロボット革命宣言にはじまり、昨年2月に取りまとめられたロボット新戦略において明確な政策目標が示されたことは極めて大きな異議を持つ。ロボット新戦略の目標実現に向けて、5月にはロボット革命イニシアティブ協議会が設立され具体的活動がスタートしたが、このような官民を挙げた取り組みが本格的に動き出すことで、ユーザー側のロボット導入気運も大いに高まった。このような中で昨年12月に開催された国際ロボット展ではその開催規模が前回の1.5倍と過去最大となるとともに来場者数も約2割増の13万人と、大盛況の中で終了した。以上のような状況の中、わが国の昨年のロボット政策は国内出荷の二桁台の伸びと堅調な輸出を受けて対前年比6%増の6300億円となりそうである。2016年は引き続き、国内での需要増に加え、米国でのさらなる景気拡大と製造業回帰による堅調な伸び、中国での減速経済の中にあっても高い自動化投資意欲、さらに欧米におけるインダストリー4.0などIoTを通じた産業用ロボットへの関心の高まりなど今年も海外事業の拡大が期待されている。そのため、本年のロボット生産額の見通しは、昨年と同程度の伸びで6700億円と公式にまとめさせていただいた。しかしながら自動化の流れというものは非常に強く、私個人的な考えだが、7000億円という数字を期待しているところである。
次に三団体の今年の豊富等だが、まず日本ロボット工業会では中長期視点に立った業界の活性化を図る必要があるが、以下の三点を重点項目として取り組む所存である。第一は市場拡大に対する取り組みである。ロボット新戦略での世界一のロボット利活用社会の実現にあたり、当会ではロボット革命イニシアティブ協議会と連携のもと、ロボット利活用推進ワーキンググループの事務局を担当している。ロボット市場拡大に向けてその役割を積極的に進めていく。第二は産学官の連携を通じた研究開発の促進である。競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や、今後の潜在市場の顕在化を図るうえでのイノベーションの加速を通じた市場の獲得・拡大が急務となっている。特に欧米先進国での技術革新に加え、新興国でのロボット技術のキャッチアップは目覚ましく、わが国としてもイノベーションの加速を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ、関係学会および関連業界との連携に務めていく。第三は国際標準化の推進である。国際協調・協力の推進である。国際標準化活動に対して引き続き積極的に取り組む所存である。
次に製造科学センターでは昨年6月に30周年を迎えた。現在、ロボット、ファクトリーオートメーションおよびこれらを統合したものづくりの各分野における調査研究・標準化に取り組むとともに関連分野での事務局事業を実施している。ロボットでは現在ロボット革命イニシアティブ協議会の活動に参加すると共に内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの先端的な研究開発をテーマに参加している。今後もロボットを含むものづくり分野において次世代をさらに先取りをした産業開発のニーズに関するソリューションの調査企画、提案において会員企業、関係団体、アカデミアとともに新たな活動を展開する予定である。ファクトリーオートメーション分野では新たに今年度からは設計・製造におけるITツールに関するデータ基盤の国際標準化について関係工業会とともに取り組みを開始した。またオートメーションシステムとインテグレーションに対する国際規格であるISO-TC184の国内審議団体として活動を樹立させる予定である。その他関連分野では省エネルギー型の建設機械の導入を促進するための補助金交付事業などの事務局を務めていく。
マイクロマシンセンターの取り組みでは、当センターが活動するMEMS産業分野の国内市場規模が1.5兆円と年率2桁の伸びが見込まれるに加え、MEMSデバイスの応用普及は着実に進展している。加速度センサ、圧力センサ等多くのMEMSがスマホなど身の回りの製品にふんだんに使われており、今や各種製品の小型化・高機能化を実現するための必須デバイスとなった。さらにIoT、インダストリー4.0などのインターネット活用など新たな取り組みの中ではMEMSデバイスが大半を占める先進センサを用いたスマートセンシングは現実社会とITを連結させる重要なツールとして注目されている。
「社会課題を解決するロボット革命の実現」
続いて来賓を代表して糟谷敏秀 経済産業省製造産業局長が、「昨年は2月にロボット新戦略が日本経済再生本部で決定され、5月にはロボット革命イニシアティブ協議会が発足し、ロボット革命元年といわれる年となった。またドローンなどの小型無人機の航行についても基本的なルールが整備され官民の協議会も発足した。新たなイノベーションの創出に向けた様々な動きが出ている。昨年12月の国際ロボット展は非常に盛況で受付には長蛇の列が出来ており、関心の高さを知ることができた。人口減少社会の中で一人あたりの生産性を高め、成長に繋げていく上でロボットが期待されている。今年は協議会が出来て2年目であり、飛躍をさらに高めればならないと考えなければならない。ロボットを活用して様々な社会課題を解決するロボット革命の実現に向けて政府としても様々な投資を引き続き申し上げる。ロボット関連の予算は昨年度と本年度予算を合わせるとおよそ170億円あまりであるが本年度予算と来年度予算を全て合わせると三百数十億円と倍増している。様々な社会課題の解決に向けて技術開発を引き続き進め、導入促進をさらに後押しをする。ロボットの国際競技大会は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催年に開催し、18年にプレ大会を予定している。この企画に向けた委員会を12月に組織をし、年明けから本格的に競技大会の準備を進めていく」とあいさつをした。