STAP細胞を開発した小保方晴子さんの快挙が連日報道されている。
日本から素晴らしい研究成果が出たことは嬉しい。
ところが――――。
毎度、しつこいくらいに言っている違和感がまた出てきた。
2年ほど前に書いたコラム「〇〇女子ってなんだ!?」↓
http://seizougenba.com/node/1210
この違和感は、「可愛らしい女性の快挙」、「割烹着」、「リケジョ」、という言葉がこれでもかと出てきた挙げ句、彼女がしていた「指輪」や「ムーミン好き」という実にどうでも良いことばかりにスポットが当たり、ドクターである小保方さんの偉大な研究開発が軽く見られてしまうという危機感から来るものだった。
割烹着は構造を見て頂くと分かるとおり、手術着と似ている。作業は身体の前でするものだから異物(埃など)を嫌う環境下において、ボタンやヒモなどは後ろにあったほうがいいという理屈にあう仕様なのだ。割烹着に着目したという視点に、さすが研究者だな、と感じた。
さて、本題に入ろう。
最近はなにかっちゃあ、「女性の活用を」という動きがある。
ビジネスにしろ研究にしろ、女性が注目されなきゃいけない理由を問いたい。
「女性ならではの感性を生かす」という言葉もよく聞く。分からないわけでもないが、感性はそもそも性別で分けるものではない。
中味なくして女性、女性と大騒ぎしていると、「うちは女性を活用している。時流の最先端」というポーズだけの女性活用になりかねない。この場合、叫ばれている「女性の地位向上」とはまったく逆であり、女性を悪用したPRに成り下がる危険性を孕んでいる。
製造業界ではすでに当然のごとく、企業規模関係なしに適材適所に人材を配置している。必要とされる個人の能力は環境によって違うが、求められる能力に区別はあっても差別はない。男女とも若かろうが年配者だろうが優れた人は優れているし、ダメなヤツはダメダメなのだ。
ここで主張したいことは、「性別や年齢を理由に、個人の可能性を否定することのない世の中の仕組みづくりが重要である」ということ。女性だけに注目しなければならない理由はどこにもない。
知人が先日、「女性が私たちの力をみせましょう! というのはまだわかるが、オッサンが企画する“女子力イベント”に違和感がある」と言っていた。まったく同意見である。最近は「リケジョで美人~~」などのワケの分からない企画まで飛び出てきて、それに進んで乗っかる女性が増殖しはじめた。こういったブームありきの場合、リケジョというブームに乗っかり注目をひくことが狙いなので、本来の目的である理系の面白さを追求するには至らないことのほうが多い。
今回、小保方さんのぜったい諦めない執念には大きく感銘した。
小保方さんを支えた方々も素晴らしい。小保方さんが相談をしても諸先輩が「知らん」とソッポを向いてしまったならば、ひょっとして今回の成果には結びつかなかったかもしれない。今回のこの素晴らしい成果は小保方さんが積み重ねてきた研究はもちろん、研究をとおしてできた交友関係も素晴らしいものだと知ることができる。これは女性力ではなく、お人柄と努力といった小保方さん自身の“総合力”の成果であろう。
もうひとつ言いたいことがある。
ips細胞を活用し、世界で初めて網膜細胞などの製作に成功した高橋政代さん(神戸理化学研究所網膜再生医療チームチームリーダー)は、偉大なドクターである。世界初の技術なのにもかかわらず、国内メディアでの露出が少なかった。しかも、なぜか「〇〇女子」とか、「リケジョ」などという呼称もなかった。もちろん、こんなことは言わなくても良いことだが、よく考えてみて欲しい。
言いにくいことだが大切なことなので正直に言うことにする。
女性はいくつになっても女性だ。わたしだったら、「キミの取り柄は研究だけで女性としては魅力が乏しいね」と指摘されている気持ちになる。高橋さんは成熟した女性だからこのようなバカバカしいことなどなんとも思わないかもしれないけれど、未熟な中年女の私が同じ立場だったら・・・と想像すると、偏見に満ちた差別を感じて、毎夜赤提灯で飲んだくれ、「ちきしょ。あたしが中年だから注目されないのか」なんて、確実にひねくれるだろう。
こんなバカバカしいことが多発しているからこそ、日本において世の女性達は仕事のやりずらさを感じているのかもしれないとフと感じた。
だから安易にブームをつくるだけの本質を疎かにした「女性力の活用」なんて、バカにすんな、と思っちゃうわけなのだ。
最後になるが、グローバル化が加速している世の中において、老若男女が出入するコンビニなどに剥き出しにしておいてあるアノ本―――たとえばお尻剥き出しの女性が表紙の「OLのみだらな秘密遊び」とか、「昼下がりの奥様の欲望」など(←注:分かりやすくするために適当に見出しをつけた)のワイセツ本を、せめてひっそり置くなり配慮が欲しいものだ。「女性が働きやすい世の中を」なーんて言う前に細かいことだが、こういった日本の風潮をもう一度見直す必要がある。
ブームありきで「女性活用」と言われてもピンとこないのが現実なのだから。