去る11月16日に東京都港区のシスコシステム本社にて、ヤマザキマザック(社長=山崎智久氏)と米国シスコの日本法人であるシスコシステムズ(社長=鈴木みゆき氏)がIoTに関する合同記者発表会を開き、製造業のIoT化の推進に注力すると発表した。
シスコは、2015年から同米国本社にて、ヤマザキマザックの『SmartBox』との開発に協力し、IoTソリューションを提供していた。鈴木シスコシステムズ社長は、「今回の発表は、ヤマザキマザックとの関係を戦略的協業関係に発展させるもので、日本の製造業にIoT化をより具体的にお手伝いすることができると確信している」と述べた。
グローバルな製造業のイノベーションを加速!
IoTは1社では実現はできないものであり、物理的ツールやセンサー、ネットワーク、データ集積並びに分析ツールそれぞれのサービスをもちよることではじめてソリューションが完成するものだが、シスコはネットワーク、コラボレーション、セキュリティ、それぞれのソリューションをグローバル化して一貫して提供できることが強み。鈴木 シスコシステムズ社長は、「日本再生の鍵といわれる第4次産業革命は、IoT、ビッグデータ、人工知能、機械やロボットを活用してはじめて実現するものであり、この実現のためにはエコパートナーが重要な役割を担うことになるでしょう」とし、「当社は協業を通じてヤマザキマザックにIoTソリューションを提供して、日本の製造業のみならず、グローバルな製造業のイノベーションを加速したい」と意気込みを語った。
山崎 ヤマザキマザック社長は会見の席で、「昨今、IoTやインダストリー4.0に代表されるように製造業にもデジタル化の波が押し寄せてきている。これまで製造業においてはセキュリティの面の問題からインターネットではなく、イントラネット、すなわち現場内のネットワークのみで繋がっているということが実情だった。今後、より高度な生産システムの実現、すなわちスマートファクトリー化を行うためにはビッグデータ分析やコラボサービスの活用が不可欠であり、これにはインターネットを経由した外部との接続も必要となる。ただし、この場合、外部と接続することで、コンピュータウィルスや不正ソフトなどのサイバーセキュリティ上の問題も懸念されている」と問題点を述べた上で、「われわれは製造業のIoT化を図る上で避けられないサイバーセキュリティの問題を解決するためにIT業界のリーディングカンパニーであるシスコとネットワーク接続装置である『SmartBox』を2015年に米国で開発した」と開発の経緯を説明した。
『SmartBox』は、セキュリティ技術に代表されるシスコのコネクテッドマシンソリューションにより、CNC工作機械やIoT対応の通信環境を簡単かつ安全に提供するものであり、その通信プロコトルとして各機器の最適化を行うために米国で作成されたMTコネクトを採用している。なお、『SmartBox』は、すでに米国と日本国内の自社工場に先行導入し、シスコと検証テストと開発を行っていた。山崎社長は、「ここでの協業作業を通し、今後の製造業のIoT化推進のためには、『SmartBox』のさらなる進化に加え、ビッグデータ解析やコラボサービスまで協業の枠を広げることで意見が一致した」と述べ、今後も協業を加速するとした。
スマートファクトリー化における『SmartBox』の役割とは
スマートファクトリー化を実現するための『SmartBox』だが、これは、①設備の効率運営、②品質管理能力の向上、③在庫削減などを視野に入れて、情報のリアルタイム共有と一元管理、分析による工場運営の効率化を目的としたものだ。大容量化するデータもフォグコンピューティングで中間・分散処理をする。活用されるのは産業用イーサネットスイッチで、世界初のCISCO IOx(ネットワークOS+Linux OS)を実装している。専用ソフトウェアにより、確実で安全なネットワーク接続とフォグコンピューティング処理を実現した。
MTコネクト対応の設備機器は6台が接続可能である。従来機や他社製の設備機器も最新のマザックマシンももちろん含んでいる。ここまでがオフィスのネットワークだが、ここから先は、データファイルを確実安全に転送する仕組みである。セキュリティ懸念のあるUSBは不要だ。MTコネクトモニタで稼動監視(見える化)による素早いアクション、そして製造ビッグデータの蓄積と分析による生産性向上が期待できる。
11月17日から開催されたJIMTOF2016でも、『MAZAK SmartBox』を展示して取り組みを披露し、日本での販売を正式に開始した。なんとなくIoTというと悪意のあるものとうっかり繋がってしまうのではないか? という不安がつきものだが、簡単で安全にIoTを始めることができるのが、『MAZAK SmartBox』の強みだ。