ジェイテクト(社長=安形哲夫氏)が、10月31日にCNC円筒研削盤『GE3i』並びにエッジ型解析モジュール『TOYOPUC-AAA』の発表会を開いた。“CNC円筒研削盤 GE3”は、約20年ぶりにフルモデルチェンジし、新型機では研削に関する様々な機能を充実させるとともに、操作性も大きく向上させ、商品競争力をさらに強化している。
一方の『TOTOPUC-AAA』は、同社が提案するIoEソリューションのひとつである「バリューソリューション」を実現するエッジコンピュータ。設備や機器から収集する膨大なビッグデータを蓄積・解析し、顧客へ新たな価値を提案するモジュールとなっている。
ジェイテクトならではの優位性でユーザーニーズに応える
井坂雅一副社長は、『GE3iシリーズ』について、「弊社のCNC円筒研削盤は研削加工に係わる多くのお客様から絶大な信頼を頂いており、現在の国内シェアはナンバーワンです。本年、ジェイテクトは10周年を迎えましたが、私どもの“歴史ある若い会社”というコンセプトのとおり、この研削盤については1955年に生産を開始して以来、変わらぬ高い精度をお客様に提供し、多くのお客様のニーズにお応えすべく、約20年ぶりにフルモデルチェンジ致しました」と述べ、一方のエッジ型の解析モジュール『TOYOPUC-AAA』の商品については、「昨今、ご存じのように毎日のようにIoTやインダストリー4.0、そして、スマートファクトリーの言葉が新聞を賑わしておりますが、ICTの関連企業や制御機器メーカー等が考えるスマートファクトリーを発表しているのが状況です。われわれも同じようにやっておりますが、他の工作機械メーカーとは違うところは、制御を持っているところです。円筒研削盤のCNCは内製で100%つくっておりますし、PLCもつくっています。設備やラインを繋げて“見える化”しよう、ということですが、トヨタ自動車がトヨタ生産方式、TPSとして昔からされていたこと」と話した。
トヨタ自動車のTPSの生命線ともいえるものを支えてきたのが、ジェイテクトだ。現在トヨタの車両系ラインのPLCは、100%ジェイテクト製であり、同社はかなり前から“繋げる”、“見える化”に取り組んでいる。
井坂副社長は、「今回、開発した機器を使い、繋げるということで、各設備から上がってくるビッグデータを処理する、すなわちデータを収集し、蓄積し、解析できるモジュール、しかも全てのビッグデータはクラウドにあげることではなくて、設備に近いところで“エッジでやる”ことが特長です」と優位性を説明した。
ユーザーから絶大な信頼を得ているCNC円筒研削盤がフルモデルチェンジ! 『GE3i』シリーズ
研削は最終仕上げ工程で、熟練技能者の間やコツ、経験に頼る部分が多いが、団塊世代の退職により熟練技能者は減少しており、技能に頼らずとも高度な加工ができる機械が求められている。そういった時流を受け、ジェイテクトでは、“誰でも簡単に高度なモノづくりができる機械”をコンセプトに、いつでも誰でも安定した加工精度が得られるCNC円筒研削盤『GE3i』を開発した。
同社では、「長年、研削盤トップメーカーとして培ってきた熱変位補正技術や制御技術を集結し、経験の浅い作業者でも熟練者並の高い精度の加工を実現します。さらに今回はより幅広いユーザーニーズにお応えするため、安定した研削精度の『GE3i』、匠の技を生かすプロ使用の『GE3i-PRO』、高精度な研削を実現するハイパワー使用の『GE3i-HYPER』の3モデルをラインナップとして拡充しました」とのこと。
■商品の特長
(1)安定した研削精度
熱変位に影響をあたえる室温変化、加工による発熱、モーター・ポンプなど機械そのものから発熱に対する性能を向上させている。具体敵にはベッドの形状やリブの配置を見直し、機械内部の熱のこもりを防ぎ、熱膨張を抑えるなど、熱容量のバランスを均一にすることで機械本体の熱ひずみを抑制させた。また、クーラント経路に断熱用アイソレーションカバーを採用し、ベッドとの間に空気層をつくり、熱影響を低減させている。また、といし軸受油ファンクーラーの搭載で、軸受油の温度上昇を低減させた。加えてボールねじの振れを吸収するフローティングプレートを砥石台とテーブルに標準搭載し、送り方向の剛性を下げることなく振れを吸収することで真直性や加工面性状を向上。さらに、長期にわたって摺動面の摩耗を抑制するため熟練技能者による“きさげ加工”をといし台、テーブルスライドともに入念に実施している。これらの徹底した熱対策により、安定した研削精度を誇るマシンとなった。
(2)らくらく操作の進化 ~CNC機能の向上~
最新の自社性CNC装置『TOYOPUC-GC70』を搭載し、従来の5倍の演算速度と10倍の通信速度によって非加工時間の短縮を実現した。従来は熟練作業者の間隔に頼っていた研削条件を数値化し、工作物の長さと径を入力するだけで、工作物剛性を自動判別し最適な研削条件を自動決定できる。また、操作ボタンのアイコン化により、海外の方でも感覚的に共通認識することが可能になった。
(3)安全・安心・作業性への配慮
機械フルカバー(オプション設定)により安全性だけでなくミスト飛散防止による環境への兵呂を行うとともに工作物への接近性を考慮し、機械全面扉の開口部を大きくすることで段取り替え時もラクな姿勢で作業できるようになっている。また、停電検出により、砥石を工作物より離間させる機能を標準搭載しているので、砥石や工作物の破損を防止できるのが嬉しい。
(4)『GE3i-PRO』~匠の技を生かすプロ仕様~
今回発表会で展示されていたのはこのタイプだが、CNC機でも油圧機と同様に機械全面ハンドルで操作を行いたいという熟練作業者の要望に応えるため、油圧機を操作する手の感覚を再現した“プロフェッショナルハンドル”を標準搭載している。操作ボタンの配置やハンドルの重量感など顧客の要望に応じてカスタマイズが可能なので、まさに使う人の“特別な1台”になるマシン。X軸(といし台送り)を操作するハンドルとZ軸(テーブル送り)を操作するハンドルの間に足を踏み入れるスペースを確保しているため、工作物への接近性を向上していた。手動操作時には、手動操作に特化したCNC画面を表示する。
(5)『GE3i-HYPER』~高能率な研削を実現するハイパワー仕様~
超硬の粗加工のような高負荷研削をコンパクトな機械で行いたいという要望に応え、ハイパワーといし軸+5.5kw小型高出力モータを標準搭載している。といし軸剛性はGE3i
比1.7倍、モータ出力は1.5倍に高めた。また、ボールねじと軸受にボールねじ潤滑から潤滑油を供給することで超硬、セラミックのような微細な切屑によるボールねじや軸受の破損を防ぎ、機械寿命の向上を実現させた。
エッジ型解析モジュール『TOYOPUC-AAA』
ジェイテクトは人と設備が協調し、人の知恵が働く、人が主役の工場を“スマートファクトリー”と位置付けている。そのため同社では、「人が主役の工場だから、モノだけでなく、人もつなげるという意味でIoT(Internet of Things)ではなく、IoE(Internet of Everything)と言っている。同社では、IoEの導入ステップを ①モノをつなげる(つながるソリューション)、②情報をつなげる(見える化素リュション)、③改善する(バリューソリューション)、④範囲を広げる(チェーンソリューション)と定義し、提案している。
■オープンプラットフォーム
この『TOYOPUC-AAA』はオープンプラットフォームとして、①既存の設備に簡単につながる、②データを収集・蓄積・解析するための機能、必要十分なメモリ容量が搭載されている、③顧客が簡単に判定出力する機能や、アプリケーションソフトウェアを簡単に組み込むことができる――という特長を持つ。このため、この製品は、製造業のみならずあらゆる業界で利用できる仕様となっている。
■製品の特長
(1)データの蓄積と解析を手軽に実現
『TOYOPUC-AAA』は、Automation(オートメーション)、Accumulation(蓄積)、Analysis(解析)の機能を担う製品。豊富なデータ表示・解析機能を搭載しており、特別なソフトを用意することなく、改善に必要な“情報の見える化”を実現した。OSとしてWindows Embedded Standard7を搭載し、csvファイルで保存される蓄積データは顧客で様々なデータ加工、グラフ表示を行うことが可能となっている。
(2)エッジ型によるリアルタイム解析
コンパクトなボディーにデータ蓄積、解析機能を有し、必要に応じて外付けハードディスクを増設することが可能。人や設備から得られた様々なデータを上位のシステムに送ると、設備台数に比例して通信に多大な負荷がかかるため、リアルタイム性が失われるが、『TOYOPUC-AAA』は、人や設備に一番近い環境でデータの蓄積、解析を可能にするエッジコンピューティングにより、通信負荷を軽減し、リアルタイム解析を行うので、イライラすることがない。
(3)オープンなプラットホームとして簡単にシステムを構成している
パソコンと同じイーサネットポートとUSBポートをそれぞれ2口用意し、またアナログRGB出力も用意しているのでディスプレイ表示も簡単にできる。
(4)豊富なアプリケーションパッケージ
基本機能である蓄積、解析に加え、機械学習のエンジンを搭載し、顧客の様々なニーズに合ったアプリケーションパッケージを今後用意していく。ジェイテクトの研削盤については顧客の困りごとである嫌な“研削焼け”を予知するパッケージを開発しており、2017年1月には発売予定である。