ガスタービンや蒸気タービンに使用される専用のニッケルベース合金は、世界で最も強度の高い被削材の1つであり、これらの合金は、発電所のより高温での稼働を可能にするべく開発が続けられている。高い強度、優れた耐高温クリープ性、相安定性、耐酸化性、耐食性を必要とするタービンブレードやその他の部品には、Inconel®、Waspaloy®、Rene®などの超合金が利用されているが、これらの被削材は、加工を困難にさせ、加工速度の低下、加工コストの増加などを招く。一般的に、超硬ソリッド工具でこれらの被削材を加工した場合の速度は65~200 SFM(20~60 m/min)で、工具寿命も短くなる。
このような背景のもと、Beyond KYS40TM材種を使用したケナメタルの新しいソリッドセラミックエンドミルは、高強度のニッケルベース合金の加工に改善をもたらし、粗加工では最大3,300 SFM(1,000 m/min)の切削速度と、同等の超硬ソリッド工具の2~3倍の工具寿命を実現している。
同社の新しいSiAlON KYS40セラミック材種と、ソリッドセラミックエンドミル全体の設計は、ニッケルベース耐熱合金の粗加工に最も効果を発揮する。
「ニッケルベース超合金の切削速度は、超硬ソリッドエンドミルと比べて最大20倍まで向上することができます。さらに、セラミックの卓越した耐熱性と切れ刃(ネガのすくい角)の強度アップによって、工具寿命が5倍以上長くなります」と同社のグローバル製品担当マネージャ、Thilo Mueller氏はコメントしている。
KYS40ソリッドセラミックエンドミルには、フェイスミーリングとプロファイル加工には6枚刃タイプ、溝加工とポケット溝加工には4枚刃のネック付きタイプの2種類ある。どちらの製品ラインも、ランピング加工、ヘリカル補間、トロコイド加工方式に対応している。
ソリッドセラミックエンドミルの摩耗メカニズムと摩耗基準は、超硬エンドミルとは全く異なる。セラミックエンドミルは、超硬工具の交換が必要となる期間よりもはるかに長く使用でき、同じ理由からKYS40材種のエンドミルは、通常の摩耗を超える用途に対応する使い切りタイプの工具としても利用できる。