三菱日立ツール(社長=菊池 仁氏)が、2月3日、都内の第一ホテル東京で販売店を対象とした「商品説明会」を開いた。
あいさつに立った菊池社長は、日頃の感謝の意を表したあと、MOLDINOブランドについて、「MOLDINOは金型産業を中心に得意分野で圧倒的なナンバーワン、これを追求すべく新商品の開発と製造をしている。既に発売して好評をいただいている高精度材用“TH3”をさらに展開していくほか、刃先交換式工具においては、荒加工から中仕上げあるいは仕上げまでカバーする金型加工のトータルの提案を可能とする商品の品揃えをしていく。お客様の期待に応えて、さらにその期待を超える圧倒的ナンバーワン工具の開発と製造を約束する。」と力強く述べたあと、「圧倒的ナンバーワンの商品を開発・製造する一方で、お客様が欲しいのは工具そのものではなくてニーズに合った加工や加工方法だと考えている。工具の世界でも競争は激しくなるばかりだが、競争する上では、工具の性能はもちろんのこと、工具の使い方によって生産現場のコストダウンや生産性の向上、品質の向上について、お客様に実感していただく必要がある。」との考え方を示した。
また、工具の性能を最大限に引き出すためのアプリケーションについて、「抱き合わせで提案できるよう周辺機器メーカー、あるいは工作機械メーカーなどとも積極的にコラボレーションを行って、お客様に納得していただける加工提案を行っていく。ニーズには高能率な加工、高精度な加工、高品位な加工、微細な加工、難易度の高い加工、あるいは自動化や省人化などのニーズが高まっていると考えている。工具メーカーとしてできることについて、愚直かつ誠実に取り組んでいく」と意気込みを述べた。
「PRODUCTION50」と「MOLDINOが目指す金型戦略」
同社では、ここ数年「PRODUCTION50」をスローガンに掲げて展開している。これは、最適な工具の選定や加工方法の最適化、工程の短縮、工程集約、あるいはコスト改善を含めた生産性向上に貢献する工具や加工方法を提案するもので、菊池社長は、「われわれが提供するMOLDINO精神が切削加工において差別化されて、抜きん出た存在になりたい。製造原価に占める工具費の割合は、一般的に2%~3%。工具費以外の製造原価には、例えば人件費や機械の償却費、電力代、研削費用、検査費用など製造に直接関わるもののほかに、加工の待ち時間も時間のコストに含まれる。工具単体の費用だけを着目して、2%~3%しかない工具費をより安価なものに替え、あるいは値引きなどに釣られるよりも、切削時間の短縮ができたり、工程短縮に寄与できる工具を使用することのほうが、トータルの加工費が削減し、経済的に貢献できると考えている。」と、同社製品を使用することで得られるメリットをアピールした。
今回の商品説明会では、MOLDINOが目指す金型戦略について、同社の開発技術を一手にまとめている坂本 靖 開発技術本部本部長(以下坂本本部長)が説明をした。
その中で、坂本本部長は、「金型加工は加工プログラムを都度変更するので、工具や条件変更の自由度が高い。また工具だけでなく、加工方法の提案により能率や品質改善にもつなげることができるので、加工提案でさらなる付加価値の創出ができる。まさにわが社のコンセプトに合った加工分野ではないかと考えている。MOLDINOではこの性能工具と共にかけがえのないパートナーとなるべく、金型ユーザーさまと共に成長していきたい。」と意気込みを見せた。
次に、金型市場についてご説明をした。世界の金型市場については、「ドイツの研究機関がまとめたものだが、技術面と市場の規模、どちらもリードしているのが日本・ドイツ・アメリカ・韓国といった4カ国となっているが、最近は停滞気味。2015年度以降大変大きな変貌を遂げている国は中国。中国は市場規模として非常に大きなものだが、製造技術の点で先進国に対して劣るところがあったものの、最近は技術力の向上が非常に目覚ましく、賃金上昇による問題等も乗り越えて、非常に成長している。」と中国の成長力について述べ、
メキシコについては、「従来、金型は海外からの輸入に頼っていたが、最近は国内生産を強化しており、市場規模として大変大きくなっている。」とした。
ベトナムについては、「先ほどの中国の賃金上昇の、脱・中国の受け先になっていることもあり、市場規模が非常に拡大している。また同時に海外メーカーも多く進出し、その技術力の向上には目を見張るものがある。」と述べた。
こうした時流を背景に日本の金型メーカーが国内生産で勝ち抜くためには、「既に定評がある製造技術、加工精度、高品質に加え、短納期が重要要素になるだろう。そのため製造技術の確立というのが非常に重要になる。」との考えを示した。
金型市場に大きな影響を与えるのは、自動車産業だが、内燃機関中心の自動車から電気自動車への移り変わりが進んでいる。この件について、坂本本部長は、「自動車業界は大きな転機を迎えている。この電動化の技術を支える一つが軽量化技術であり、多くの部品が、従来と異なる軽量化素材が使われるようになっている。チタン、マグネシウム、アルミニウム、樹脂など、今後もますます新素材が増えていくだろう。こうした中で金型市場が直面している課題は、自動車産業では、開発期間の短縮、量産へのスムーズな展開に向けた試作品製作、新商品投入による金型の短納期化の要求が非常に高まっている。また、高強度部材の成形により金型の難削化、高精度化、こうしたニーズも高まっている。」と説明をした。
金型業界に貢献するために開発された工具における優位性が説明され、第2部の懇親会では、和やかな雰囲気の中、参会者は交流を楽しんだ。