日本ロボット工業会(会長=橋本康彦 川崎重工業常務)が5月22日、東京都内の東京プリンスホテルで通常総会を開いた。
総会後の懇親会であいさつに立った橋本会長は、「米中の貿易摩擦が当初見込みに反して、ますますエスカレートする方向にあるのに加え、英国のブレクジット問題、欧州議会の選挙等、われわれにとっては不安要素を抱える中でさらに不透明感が高まっており、景気の回復が遅れることを懸念している。」と先行き不等感を滲ませた。2018年度については、「受注額は9,624億円(前年比+1.9%)、生産額は9,116億円(+3.9%)と、それぞれ数字的には、過去最高となった。」と述べた。
2019年度については、「国内需要では引き続き好調な状態が続いるが、米中貿易摩擦の影響から、出荷額の7割を占める海外輸出が2018年度下期から減速傾向は続いている。年初の期待に反して、受注額は9,400億円(前年比▲2.3%)。生産額は、8,800億円(▲3.5%)と残念ながら5年ぶりのマイナス成長となる見込み。」と予測した。
また、ロボットの社会実装を加速して、社会改革を担うことについて触れ、「必要な制度整備や施策体系について早急に取りまとめをすることになっており、ロボット業界としてもロボットの利活用推進に当たっては全力で取り組む所存である。本年度は市場拡大に向けた取り組み、イノベーション加速に向けた産学連携の推進、国際標準化の推進や国際協調・協力の推進という柱を挙げて、進めている。」と述べた。特に市場拡大に向けた取り組みについて、「昨年7月に設立したFA・ロボットシステムインテグレータ協会の会員が既に200社を超えるという大きな規模になっており、業界の期待の大きさが伺われる。業界としても、これらの期待に応えるべく、業界のネットワークの構築や、事業環境の向上、システムインテグレーションに対する専門の高度化、さらには、マッチング活動や人材育成といった活動を積極的に展開することとする。また、競争力をベースにした、グローバル市場での優位性に向け、イノベーションの加速を通じた市場の獲得、拡大、さらには市場におけるわが国の競争力の維持等、引き続き、日本ロボット学会はじめ、各関係学会、そして、関係業界との連携を深めていく。」と強調した。
来賓を代表して井上宏司 経済産業省製造産業局長があいさつをした。井上局長は、「国内外でのロボットへの関心、期待はますます高まってきている一方で、国際関係の面では保護貿易主義的な動きがある。企業の皆さま方におかれては、企業戦略、非常にご苦労をされ、先行きが見えない、見えにくい状況があろうかと思う。私どもとても、こうした国際関係の動きについて、情報交換をさせていただきながら対応していきたいと思う。また国際についても引き続き、自由で公正な貿易ルールが、維持形成されるように、交渉に取り組んでいきたい。」と述べた。また、政府の取り組みについて、「2020年には、愛知県と福島県においてWorld Robot Summit 2020を開催する予定だ。開催に向けて、競技ルールの公表、競技参加者募集等の準備を進めている。大会の成功に向けて、政府としても全力で取り組んでいく。World Robot Summit 2020の開催地でもある福島ロボットテストフィールドの整備を進めているが、昨年の7月には、通信塔が完成をし、今年の2月には試験用プラントが、それぞれ開始をしたところだ。いよいよ本年度の末には、全面開始という予定となっている。ロボットあるいはドローンの実証評価を行う場として、国内外の多くのかたがたに、このロボットテストフィールドを活用していただきたい。」とした。