国際ロボット連盟(略称IFR:会長=津田純嗣 安川電機会長)が5月19日に発表した最新のWorld RoboticsReport 2019 の予備結果によると、2018 年の英国における産業用ロボットの設置台数は2,306台で3%減となった。ただし前年の英国ロボットの販売台数は前年比31%増であり、欧州連合の最近の販売台数も依然としてプラスで12%増加している。
欧州連合(EU)の産業用ロボットの販売台数は12%増加
地域別産業用ロボット密度では、欧州が世界で最も高い水準にあり、製造業従業員10,000人あたりの密度は106 台で、ドイツ(3 位)・スウェーデン(5 位)・デンマーク(6 位)・ベルギー(9 位)・イタリア(10 位)がトップ10 に入った。一方、英国は世界平均に相当する85 台で世界22 位に留まり、2017 年に英国を追い越した中国は現在97 台で21 位となっている。
British Automation & Robotics Association (BARA) のマイク・ウィルソン会長は、この件について、「英国では、自動車以外のすべての製造部門で主要な競合他社よりもロボットによる自動化の導入割合が低く、長年にわたり企業が資本設備への投資よりも雇用を優先し他国の労働者を集めてきた。ブレクジットをめぐる国民投票の結果とその後の政治動向により、東ヨーロッパ出身の労働者の多くが帰国を始めているため、労働力が減少している。必然的に企業は労働力を効果的にし、業務遂行に人員が不足している場合は、その代替案を見つけなければならない。ロボットによる自動化が解決策となるのは明白である。」と見解を示している。
IFR World Robotics Roundtable における専門家の意見
アメリカ・シカゴで最近行われたIFR CEO Roundtable 2019 では、世界中の専門家がロボットと人工知能 (AI) のグローバル競争について議論する中で、Information Technology and Innovation Foundation (ITIF:情報技術イノベーション財団) のロベルト・アトキンソン博士(会長)は「ロボットの導入は、生産性の成長を促すうえで中心的役割を果たし、すべての国がより迅速な生産性の向上を望むべきである。」と述べ、国際ロボット連盟の津田会長は、「ロボットは製造業に欠かせない重要な役割を担っており、非常にたくさんのプロジェクトが現在進行している。ロボットは多くの分野に適用できるので、ロボットの能力向上に取り組んでいる関係者の誰もが勝者になる可能性がある。AIに関していえば、開発者コミュニティーはとてもオープンで、基本論理を世界中で共有しながら実装をめぐって競争している。またそれらの実装化は、ロボット工学と非常に密接な関係があり大きな影響を受けているゆえ、ロボティクスにおける人工知能に関していえば、日本と欧州が依然としてロボットの適用に大きな役割を果たすことができる。」と明るい見通しだ。また、アメリカAdvanced Robotics for Manufacturingのバイロン・クレイトン博士(CEO)は、「我々は実装面にもっと集中することが必要で、米国政府はハイテク技術の実装面と展開面についての政策に資金と労力を注ぎ込み、すでに工場への導入が進んでいる国際的な事例に習う必要があります。」としている。