日本ロボット工業会(会長=橋本康彦 川崎重工業常務)、製造科学技術センター(理事長=斎藤 保 IHI会長)、マイクロマシンセンター(理事長=山中康司 デンソー副社長)が主催するロボット関連三団体が1月11日、東京都内の東京プリンスホテルで賀詞交歓会を開いた。
三団体を代表してあいさつに立った日本ロボット工業会の橋本会長は、日頃の感謝の意を表したあと、「わが国では昨年、2025年の大阪万博の開催が決定し、京都大学・本庶佑特別教授のノーベル医学生理学受賞、2020年の東京オリンピック開催に向けて、スポーツ界での様々な活躍といった明るい年であった一方、台風や地震などの大規模な自然災害が多発した年だった。」と振り返った。経済環境については、「世界経済は緩やかに拡大するなか、米国での金利上昇や米中貿易摩擦の先行きに対する不透明感、株式市場の不安定な動きが見られるほか、中国においても貿易摩擦の影響が実体経済に現れつつあり、さらにはユーロ圏においても景気が減速しつつある。このように、世界経済は保護主義的な傾向による減速懸念を抱えたなかでの幕開けとなった。わが国経済は、政府の各種政策効果もあって雇用・所得環境の改善で緩やかながら景気回復が持続している。ロボット業界は、こうした景気回復下で少子高齢化による人手不足感の拡大と併せ、2015年に取り纏められた『ロボット新戦略』での政策目標と、それに伴う各種施策に支えられ、ユーザー側での需要意欲に底堅さが見られた。」と述べた。
2018年の受注額は、「わが国のロボット産業は、国内需要が引き続き堅調な伸びを示した一方で、需要の約7割を占める輸出が昨年後半より前年割れが見られたものの、2018年は受注額で対前年比約7%増の1兆100億円が見込まれ、業界初の1兆円越えとなる。生産額においても、対前年比約6%アップの9,300~9,500億円を見込んでいる。」とし、2019年の見込みについては、「2019年は、引き続き米中の貿易摩擦による景気減速懸念はあるものの、引き続き中国をはじめアジア及び欧米においても世界的な自動化投資意欲が大きく期待されている。このようなことから、本年のロボット受注額は対前年比4%増の1兆500億円に、生産額は約4%増の9,800億円程を期待している。」とした。
3団体の今年の活動について
橋本会長は、あいさつの中で、業界活性化のさらなる推進に向け、昨年に引き続き、以下の3点を重点項目として取り組むとした。
(1)市場拡大に向けた取り組み
ロボット革命イニシアティブ協議会との連携のもと、2020年に向けロボット新戦略での「世界一のロボット利活用社会の実現」を目指し、マッチング活動や人材育成並びに環境整備など具体的成果に繋がるよう引き続き積極的に活動していく。また、ロボット利活用推進にとってシステムインテグレータの役割は極めて重要との認識から、昨年7月、同工業会内に「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」を設立した。協会では、業界ネットワークの構築や経営基盤や事業環境の向上、さらにはシステムインテグレーションに対する専門性の高度化に向けた活動を積極的に展開する。
(2)イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進
競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後のAI及びコネクテッドインダストリーズを通じた潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大、市場におけるわが国競争力の維持・向上からも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携を図っていく。
(3)国際標準化の推進、国際協調・協力の推進
国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいるが、わが国としてもリーディングカントリーとして官民挙げて国際標準化活動に対して引き続き積極的に取り組むとともに、国際ロボット連盟を通じた活動並びに国際交流を積極的に推進していく。
また、今年は6月5日~7日に例年同様「実装プロセステクノロジー展」の開催に加え、12月18日~21日には、隔年開催の「2019国際ロボット展」を開催するが、橋本会長は、「これらの展示会を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する。」と述べた。
製造科学技術センターでは、ロボット、ファクトリー・オートメーション、ものづくりなどにおける調査研究や、標準化に取り組んでいるが、「昨年度までに“インフラ維持・管理のロボット等の性能評価手法”を開発したが、本年度からは、その普及、改定や、“福島ロボット・テスト・フィールド”を活用したロボット開発を目指した“人材育成”に関する行動を開始した。」とした。さらに、「ものづくりでは、人とロボットの革新的な協力形態の実現により、複雑な産業機械製品の新たな生産手法の確立を図る調査研究を引き続き進めている。」とし、標準化では、「製品に関するデジタル・データの流通・活用や、製造ラインにおける省エネ効率化のためのデジタル検証などについて取り組んでおり、その成果はコネクティッド・インダストリの基盤形成に着々と貢献しつつある。特に、産業オートメーション・システム等に関する国際規格であるISO/TC184の国内審議団体として、スマート・マニュファクチャリングの推進にも取り組んでいる。」と示した。
マイクロマシンセンターの取り組みについても「我が国のMEMS(メムス)産業においては、政府が推進するコネクテッド・インダストリーズによるソサエティ5.0の実現に不可欠であるIoTシステム構築、ロボット、AI、センサなどのキーデバイスとしてのMEMSの技術革新を目指した研究開発が益々活発になっている。」との見方を示し、以下の3点を重点的に取り組むとした。
(1)MEMSのオープンイノベーションセンターであるMNOIC(エムノイック)のファンドリ事業について、関係業界からも強い期待が寄せられている。運営の拡充・強化にこれまで以上に努める。
(2)将来の研究開発プロジェクト実施に繋げる活動として、今年も業界として必要となっていく研究シーズの検討を行い、医療やバイオ、エネルギー分野などを含め、幅広く将来の研究開発プロジェクトに繋げていく。
(3)「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」を、IoTシステムの最先端技術展として、さらに発展させ、わが国のコネクテッド・インダストリーズ推進のためのプレゼンス強化に努める。
「ロボットはなくてはならない技術」
来賓を代表して井上宏司経済産業省製造産業局長が、「受注額でみると、いよいよ年間1兆円超えを見通せる状況になった。ソサエティ5.0の実現に向けた第四次産業革命、コネクテッド・インダストリーズの推進を経産省も企業の皆様と一緒に進めている。ロボットはなくてはならない技術である。」とし、引き続き連携の強化を強調した。また、国際情勢にも触れ、「保護主義的な動きが見られ、昨年末には、TPP11が発効し、今年は日 EUのFTAが発効する。日本としては自由貿易の旗手として引き続き国際交渉にもしっかりと臨み、皆様方が創意工夫により事業開拓ができるようなフィールドを確保していきたい。」とあいさつをした。
石塚博昭 新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事長が乾杯の発声を行った。宴もたけなわの頃、散会した。