「『生産性革命』と『人づくり革命』を推し進めていくことが必要」
経済産業省製造産業局 産業機械課長 片岡隆一
平成30年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
安倍政権発足以来、名目GDPは50兆円以上増加し、正社員の有効求人倍率が1倍を超えるなど、力強い経済成長が実現しています。雇用は185万人増加し、昨年の春に大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高となっています。我が国として、『戦後最大の名目GDP600兆円』の実現に向け、この成長軌道を確固たるものとするためには、『生産性革命』と『人づくり革命』を力強く推し進めていくことが必要です。
欧米で端を発した第四次産業革命の波は我が国にも押し寄せ、日本のものづくり産業は大きな転換期を迎えようとしております。日本企業が生産性を向上し、競争力強化を図っていくためには、第四次産業革命への対応、すなわちロボット、IoT、ビッグデータ、AIなどの活用が不可欠です。そうした中、第四次産業革命による技術革新を踏まえた今後の日本が目指すべき産業の在り方の鍵を握るのが、「Connected Industries」です。
「Connected Industries」とは、様々な業種、企業、人、機械、データなどがつながることによって、新たな付加価値や製品・サービスを創出し、生産性を向上させ、高齢化、人手不足などの社会課題を解決することで、産業競争力の強化につなげていこうというものです。これから未来に現れるチャレンジは、ますます複雑になることが想定され、単独のリソースでの解決は困難です。また、その変化のスピードも早く、待っているだけでは、世界の潮流に取り残されてしまいます。工場の機器の効率化、オープンプラットフォーム化やデータ連携、ロボットの活用を通じた工場全体の最適化の流れを見据え、世界最先端の産業を目指して、皆様と一緒に、現場目線で取り組んで参ります。
一方でロボット化・自動化によって単に雇用を奪うのではなく、『匠の技』などの見える化による若い職員のスキル習得など、技能承継の取組も重要です。また、単純作業や重労働を省力化することで労務費を削減し、そのぶん、若者、女性、お年寄り、障害のある方などが働きやすくなるような働き方改革や、第四次産業革命を支える、ものづくりとITの双方に精通した人材の育成も重要です。即戦力を確保しながら、中長期的には、将来を担う人材をしっかりと育成できるような取組を我々も後押して参ります。
こうした取組に加え、産業機械業界でも、中小企業の取引条件を改善するための自主行動計画を策定する動きが進んでおります。企業間取引においても、是非winwinな関係となるよう、この取組を産業界全体で進めて頂きたいと思います。
我が国の経済・社会の発展は、ものづくり産業とともにあり、その中でも、産業機械産業は、明治以降、根幹を支える『土台』でありました。皆様の現場を熟知する知見は『日本の宝』です。IoTもAIもツールであり、優れた現場の知見を有する皆様が、それぞれの課題解決にどう活かしていくかが重要です。これらのツールを用いて、新たな発想やつながりを広げ、これまでの常識に囚われない大胆な試行錯誤と挑戦が進んでいくことを期待しております。
産業機械課としても、これからも皆様の『現場の声』を聞き、政策に生かしていきたいと考えておりますので、是非とも気軽にお声掛けください。
最後になりましたが、本年は、『明治150周年』という節目の年でございます。本年が皆様方にとってさらなる飛躍の年となりますように祈念いたしまして、新年の挨拶と代えさせていただきます。
「イノベーションを活用した生産性革命への取組みは世界各国において喫緊の課題」
日本機械工業連合会 会長 大宮英明
皆様、新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご支援とご協力に対し、改めて深く御礼申し上げます。
我が国機械産業全般の動向を見ますと、日機連の「機械生産見通し」においても、今年度の国内機械生産は、前年度比5.5%増と、この7年間で最大の伸び率が予想されるなど、国内外の景気動向を反映して総じて堅調な状況が続いております。昨年度のマイナス成長に対して今年度はほとんど全ての業種において増加基調にあり、こうした状況が新年度の4月以降も継続することを強く期待するところですが、労働需給のタイト化も気になるところです。
いざなぎ景気を超えるアベノミクスの5年間にわたる景気回復のなかで、280万人の就業者の増加に伴い、失業率はバブル崩壊以降最低の水準となりました。人手不足の影響が大企業/中小企業、また地域を問わず日増しに高まっていることを、多くの皆様が実感しておられることと思います。
こうした労働需給のトレンドは、今後のわが国経済の状況並びに我々機械産業の行方を左右する最も重要なポイントになるのではないかと感じております。少子高齢化のなかで、今後のわが国の「労働力人口」は、10年後には約8%の500万人の減少、そして20年後には約16%の1000万人以上の減少が見込まれるとも言われております。こうした予測値は、ワークライフバランスの改善等の取組みによってある程度変化するものではありますが、人手不足がわが国経済にとって最早構造的な課題であり、労働需給が構造的にタイト化してきていることは抗うことのできない潮流ではないかと考えます。
こうしたなかで、政府におかれても昨年12月に、『新しい経済政策パッケージ』を取り纏められ、「少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、2020年までの3年間を集中投資期間と位置づけ、取組む」との方針が打ち出されました。また、このための対策の一環として、一定の賃上げや人材育成、設備投資を前提条件とした法人税率の引下げ措置の導入が決定されたところであります。構造的な労働需給のタイト化を前にして、人手不足を成長の隘路としないためのこれまでにない創意工夫が求められていることは論を俟たないところです。
労働需給のタイト化は、機械産業にとって二重の意味を持っています。取引企業や自社の生産現場での人手不足に如何に対応するかという自らの課題の一方で、顧客への機械及びシステムの提供を通じて、ユーザーの省人化、生産性の向上に貢献するという立場です。人件費の上昇圧力の下で、企業がコスト競争力を維持する為には、相当程度の省力化投資を進め、生産性改革の実現に本気で取組む必要があります。日機連におきましても、こうした動きを促進すべく、所要の税制の実現につき、関係方面への要請を行ってまいりましたが、そうしたなかで償却資産向け固定資産税課税の改善、IoT関連税制の創設、省エネルギー税制の創設等、投資を円滑化するための一連の税制が実現することとなりました。人手不足のなかで製造業、サービス業を問わず所要の投資を進める上で、今回の決定は、時宜に適ったものと考えており、機械ユーザーサイドでの制度の積極的な活用を強く期待しております。
加えて、イノベーションを活用した生産性革命への取組みは、わが国のみならず、世界各国において喫緊の課題として認識されております。私が併せて会長を務めておりますRRI、ロボット革命イニシアティブ協議会が経済産業省とともに昨年11月末に開催致しました国際シンポジウムにおきましても、ドイツ、アメリカ、中国、スウェーデン、チェコなど各国からの代表者が参加し、非常に強い問題認識のもとで、IoT革命を巡って極めて活発な議論が行われました。また、米国のIIC、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムからの要請もあり、RRI-IIC間での連携協定の締結を発表致しました。今年前半からも具体的な連携活動が開始される予定であります。このシンポジウムに参加して、私は、取組むべき課題が山積しており、かつグローバルに共通していること、そうしたなかで課題解決に向けた各国間のコラボレーションが強く期待されていることを改めて痛感致しました。
スマート・マニュファクチャリングに関する国際標準化に向けた取組みも今年はIEC中心に加速していくものと思われます。国内の取組み体制も充実が期待されるところであり、関連する工業会のご協力をいただきながら、わが国がこの面でも積極的に貢献できる立場に立てるよう取組んで参りたいと思います。
皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、新春のご挨拶とさせていただきます。
「わが国の成長力の底上げと生産性向上に向けて」
日本産業機械工業会 会長 佃 和夫
2018年を迎えるに当たり、新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気持も新たに新年を迎えられたことと思います。
昨年を振り返りますと、経済面ではわが国の実質国内総生産(GDP)が7~9月期に7四半期連続のプラス成長となるなど、海外経済の拡大を背景に輸出や生産が伸び、緩やかな景気回復が続きました。しかし、企業収益が改善した一方で個人消費の伸びは力強さが見られるまでには至りませんでした。
通商面では、新たな環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意や、日本とEUの経済連携協定(EPA)交渉が合意するなど、貿易と投資の自由化に向けた質の高い通商ルールの整備が進展いたしました。
一方、海外を見ますと、朝鮮半島の緊張感の高まりや中東の政治情勢の不透明感、英国のEU離脱交渉の行方、米国のTPPや地球温暖化対策パリ協定からの離脱の表明など、世界情勢が刻々と激しく変化した一年だったのではないかと思います。
我々産業機械業界の2017年度上半期の受注は、内需・外需とも増加し、上半期としては3年ぶりにプラスへ転じました。内需は民需・官公需とも増加し、外需は中国やアフリカ、オセアニアで増加するなど、機種により差はありますが、総じて見れば受注環境の明るさが増してきたと思います。
こうした中、2018年は、わが国の成長力を底上げし、多くの人たちがその成長を享受できるという成長と分配の好循環を確立していく必要があると思われます。そのためには、多くの産業が第4次産業革命に対応した設備への転換を図り、人工知能・ロボット・IoTなどを活用したイノベーションの実現に取り組み、生産性や競争力を一段と高めていくとともに、少子高齢化や人口減少で縮小が懸念される国内市場の消費や投資の機会を広げ、新たな需要の創出・拡大に繋げていく事が重要であると考えます。
我々産業機械業界としても、時代の変化に対応した新たな「ものづくり」の創出に取り組み、優れた製品とサービスを提供し、わが国産業の生産性向上と国際競争力強化に引き続き貢献していきます。併せて、日本の強みであるエネルギーや環境分野の技術をさらに進化させながら、温暖化を始めとする地球規模での環境対策にも積極的に取り組んでいきます。
政府におかれましては、わが国産業が世界に誇る「ものづくりの強さ」を活かし、国内外の様々なニーズに応える新たな製品やサービスを創造していくために、企業の研究開発、設備投資、人材育成等を促進させる各種施策のさらなる充実を図っていただきたいと思います。また、日本企業が安心して海外への事業展開ができるよう、自由貿易の促進や国際通商ルール作りに粘り強く取り組まれることを期待しております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。