2017年国際ロボット展(主催:日本ロボット工業会、日刊工業新聞社)が、「ロボット革命がはじまった ~そして人に優しい社会へ」をテーマに、11月29日(水)~12月2日(土)までの4日間、東京ビッグサイトで開催した。この展示会は2年に1度開催する世界最大規模のロボットトレードショーで、今回で22回目を迎えた。
今回の展示会は前回(2015年)を大きく上回り、612社・団体2775小間(前回446社・団体1882小間)の過去最大規模での開催となった。特に産業用ロボットメーカーによる大規模展示のほか、ロボットに関する要素技術は見所が満載。他にもトレンドの最新介護・福祉ロボット、災害対応ロボット、生活支援ロボットが一堂に揃った。
産業用ロボットに関して小レポートする。
自動化は必至。時代はティーチングレス! アプリを動かすソフト関連の技術躍進が目立つ。
ちょうどロボットの展示会の時に取材がたて込んでおり、会期中はほとんど東京にいなかった筆者。やっと見学に行けたのは12月1日。この日は金曜日ということもあって、ものすごい来場者数! いや、ほんと、カメラ撮影どころか、まともに歩くこともできません。パチンコ玉のように人の波にハジかれながら、フラフラと前に進みます。
見学したいものはたくさんあった。初日から見学することが出来なかったこともあり、仲間や知人からは、「あそこのアレが面白かったよ」等々、いろいろ情報は聞いていた。これは短い時間でも確かめなければなるまい。
まずは不二越のブースを見学。同社は総合機械メーカーというだけあって、強みの融合がさらなる強み。人と協働で作業をする技術を全面に押し出しています。新製品のロボット「CZ10」とスマートグラスを使用し、同一工程に、高速・精密なロボット作業と人の作業、例えば最終仕上げや検査などを行いましょう、というデモが展開されていました。スマートグラスをかければ作業内容を指示してくれるので楽ちんです。デモではスタートボタンを押すと、目の前には外部の風景と共に作業順列や確認作業が映し出され、指示される。これらは漏れや誤品を防止する、という狙いがあるようだ。電子基板組立の作業におけるデモを体験しましたが、指示通りに作業をすれば間違いがほとんどないので、様々な方が仕事に参加できるよう幅が広がるといった人と社会に優しいロボットでもあると感じた。
他にも同社では驚く技術を披露していた。“人の接近を検出して退避させるロボットも先述の「CZ10」が大活躍。デモではミカンの箱詰め作業を披露していましたが、果物を視覚センサで認識し、取り出して箱詰めをする。人の接近を検知すると、即座に作業を停止。そこまでは、なんとなく他にもありそうですが、注目したいところは、その次! さらに人間が近づくと、干渉を避けるようにロボット自らが退避するのですから、これには驚いた。なんて優しいロボットなんだ! 近づくと止まるロボットはありますが、自らが避けてくれる、というロボットは聞いたことがありません。
11月24日に、デンソーウェーブ、ベッコフオートメーション、エクサウィザーズがディープラーニングでロボットアームをリアルタイムで制御する双腕型マルチモーダルAIロボットを開発したとリリースし、今回の展示会でも大きな注目を集めました。デンソーウェーブはこのロボットを一目見ようとする来場者でいっぱい! このAIロボットの写真をよくご覧になっていただきたいのですが、人間の指そっくり! このように多指ハンドを装着した双腕型のロボットアームで、不定形物を扱う複数の作業をロボットに実行させるためには、膨大な量のプログラムを組む必要があったのですが、3社が開発したマルチーモーダルAIロボットには、ユーザーのプログラミングは存在せず、ディープラーニングとVR技術で、ロボットに作業を学習させることができるというから驚きました。
この技術は、VR技術とロボット操作を連携させ、全天球カメラを利用した視覚と触覚に訴えるVRティーチングシステムによって、ロボットアームの軌道を直感的に教えられるようになり、記録された軌道とロボットアームやハンドから得られるセンサー情報をロボットに学習させることで複雑なプログラムを組む必要がなくなった、というもの。要するに人が人にものを教えるのと同様のことをロボットが出来るのですから、凄い時代になったものです。デモではサラダ美しく盛りつけることができました。
続いて、ABBのブースに向かう。ABBとKAWASAKIの双腕ロボットのコラボ「ABB YuMuⓇ+Kawasaki duARoⓇ」が協働して基板上の微細な部品を組み立てています。従来、メーカーは人手による作業も必要でしたが、生産量の2倍~3倍の変動を強いられるメーカーにとって人手不足は悩みの種。こうした課題に対応するためのロボットは今後ますます必要になるでしょう。ちなみにKAWASAKIは、塗装ロボットを人が遠隔で教示し、スキルを覚えさせる実演をしていました。
続いて向かったのは、安川電機。ミニカーの組立ライン(i³-Mechatronicsコンセプト)の人と協働デモンストレーションを行っていました。IoT・AIソリューションも分かりやすいと来場者の皆様にも評判。このi³-Mechatronicsコンセプトは、新たな産業自動化革命の自動化に向けた同社のソリューションで、ソフト面の進化が進んでいる印象を受けました。やはりロボットそのものの進化も重要ですが、アプリケーションの技術は今後さらに加速していくのでしょう。
黄色といえばファナック。もう、人がすごくて、並ばないと見学できないほどの繁盛ぶりを見せてくれました。来場者にロボットがカップラーメンを手渡しています。この緑のロボットは、カバーも柔らかくできています。安全柵もありません。筆者もカップラーメンを貰い、お話しをお伺いしかったのですが、並ぶ時間がありませんでした。残念!
続いて拝見したのは、KUKA。ビールにつられました。ビールの栓をロボットが抜き、ビールを注ぎます。ちゃんとグラスを斜めにしているところもポイント。酔ったオジサマが乱暴にビールを注ぐのとはワケが違い親切丁寧です。最後に少し残ったビール瓶をシェイクして泡立て、今度はグラスを立てて注ぐ。泡だらけのビールや泡がないビールではなく、美味しいビールを注いでくれるのですから、なんてデリケートなロボットなんだ! と感動。ロボットはビンを戻して、注いだビールを持ち、外国語なまりの日本語で「かんぱーい」と、見学者に手渡しします。ちなみにビールはドイツビールでした。来場者もロボットのオモテナシに心奪われた様子です。デザイン性もGOOD!
あっという間に見学時間が終了してしまったのが残念でしたが、今回のロボット展では、自動化による取り組みが目立っていました。また、人に優しい協働ロボットも花盛りで、協働ロボットの場合は安全柵のないものがほとんど。人とロボットが安全に作業できるため、安全柵の必要がなくなれば、その分、工場内スペースの有効活用が期待できます。さらに、ロボット単体というよりもアプリケーションを動かすソフト関連の開発も今後ますます加速するだろうと感じました。