アマダホールディングス(社長=磯部 任氏)は、板金加工機械のパンチングマシンに装着する金型の生産工場を、岐阜県土岐市にある「アマダ土岐事業所」内に建設する。同社では2016 年度から新たに策定する新中期経営計画では、「レーザビジネス」、「サービスビジネス」、「自動化ビジネス」を成長戦略の柱としており、今回の金型工場の建設はその第一弾として「サービスビジネス」の強化を図っていくもの。
今回の新工場は、IoT 技術・自動化による最新設備で構築。IoT システムをベースとする新工場と、Web システムをベースとする新販売システムを構築し、顧客個別の依頼から金型納品まで全工程をサポート。短納期での納品が可能となる。
新工場は従来の金型工場とは異なり、顧客から発注を受ける金型フロントシステムから金型製造、そしてアフターサービスまでをIoT 技術でつなぎ、QCD すべての面でお客さまに大幅な付加価値アップを提供できるシステムとなる。新システムの完成により、同社の顧客は24 時間365 日、いつでもどこからでも金型発注が可能となるばかりでなく、自社の保有する金型の寿命などの管理も可能となる。またWeb を通して加工方法のガイダンスやアマダの持つ板金加工技術の利用も可能となり、利便性が飛躍的に向上する。
また、従来は、顧客が金型を発注後、手元に届くまでの時間が読めず仕事を失うこともあったが、今回の新システムにより、在庫や納期の見える化が実現し、安心して生産準備ができるようになる。
昨今の板金加工業界はグローバル大競争のなかで、変種変量生産への対応、自動化、長時間運転への対応等のニーズが高まっている環境を背景に、特に先進的なユーザーは、近年積極的に長時間無人化運転可能な設備を導入する傾向にある。一方、加工機メーカーは、厳しいグローバル競争下にある先進的な工場の長時間稼働、無人化への動きをサポートする必要に迫られていた。このような時流を受け、同社は、1971 年にNC タレットパンチプレス(NCT)を市場投入して以来、差別化商品を提供し、多くの支持を得ており、45 年経った今日、世界で32,500 台のNCT とパンチ・レーザ複合マシンが動いている。現在、ブランク加工はパンチングからレーザに変わる中でも、既存機の顧客工場の稼働率向上を支援するために今回の設備投資を決断した。
新金型供給システムの完成により、金型の納期が50%短縮し、さらに加工履歴を蓄積し、正確で迅速なマシン稼働をサポートできるアマダ独自のQR コード付きのID 金型の量産体制も整うことになり、「究極の止まらない工場を目指す顧客の大きな後押しになる」としている。世界的に高まっているIoT 技術利用を自社工場でトライすることでノウハウを蓄積し、ソリューション提案の幅を広げ差別化を図っていく考え。
また、工場管理にIoT 技術を利用することで大幅な生産性の向上、省エネ、省力化などランニンググコストの軽減が図れる。
・生産能力:1.5 倍 (20,000 本/月→30,000 本/月)
・PH生産高:4倍 (1,250 本/人→5,000 本/人)
・要員:1/3(16 名→6 名 ▲10 名63%)
※伊勢原再編も含めると製造110 名→78 名 ▲32 名30%
・省エネ:▲40%(工場無窓化、LED 照明,設備省エネ化)
・着工:2016 年3月
・生産開始時期:2017 年7月稼働予定
・生産延床面積:6,100 ㎡
・投資総額:約100 億円(設備+工場関係 約80 億、システム関係 約20 億)
(※ 現在、伊勢原にある金型工場は再編し、引き続きベンディングマシンの金型と、特型など一部のパンチングマシンの金型を製造する)。
新しい金型供給システムの「お客さま専用Web マイページ」とは
マイページを設定していたユーザーは、事務所のPC はもとよりタブレットやスマホを使っていつでもどこからでも次のサービスが受けられる。
①必要な金型が、Web で何時でも見積りができる。
②金型を納期が見えた状況でオーダーできる。
③金型の技術データが、Web により金型納入前にセットアップできる。
④発注した金型の納期と出荷、配送予定までが確実に見える。
⑤顧客が必要とする加工情報をサポートする。
・特殊な金型のセット、加工方法のWeb ガイダンスが24 時間、活用できる。
・正しい金型技術データがWeb から正しくセットアップできる。
・金型頻度管理からコンディションBefore チェックができる。
⑥生産実績の振返り(PDCA)、最適な生産への備えをサポートする。
・加工された製品情報と金型情報のすべてがセットで記録され、何時でも取り出せる。
なお、Web 環境のない(非会員)でも、アマダサービスマンに問い合わせすることで、現場や出先から上記オペレーションにより、同様のサービスが受けられる。
新工場の自動化工場の概要
パンチング金型を究極の年間8760 時間(但し夏休み、年末年始とメンテを除く)、自動化、完全無人化で生産する工場を目指すため、ロボット設備は安川電機とIoT システムは日立産機システムや富士通とのコラボレーションで構築した。
従来の材料搬入から仕上げ工程までのFMS 型一貫ライン(18 年前に構築)ではなく、各工程を最新鋭の設備による自動化セルラインで構成し、多様化したニーズ(変種・変量)にフレキシブルに対応する。また、工場のすべての設備と加工ワーク(ワークに刻印されたID を介し)をネットワークで接続することで、稼働状況・工程進捗・負荷状況・製品トレーサビリティ情報等をリアルタイムに管理し、Webを介して必要とする在庫や納期情報等が“いつでも・どこでも”見えるIoT 工場(V-factory)を実現する。
①設備やセルの稼働・進捗・生産負荷状況等がWeb を介して24 時間どこでも参照可能。
②金型ID をキーとして、素材から完成までの製品トレーサビリティを管理するため、製品出荷後も金型ID を読み込むことで、製品トレーサビリティが24 時間どこでも参照可能。
③各ラインをセル単位で構成することで、トラブル発生時にも他の工程を止めることなく、セル単位で容易に切り離しが可能となり8760 時間稼働を実現。
(※従来は工程の途中でトラブルが発生した場合、最悪全ラインの停止となり復旧に際しても数時間を要している)。
④完成工程(リサイズ)セル化により、受注後3時間以内の加工出荷対応可能。
(※従来は、素材からの一貫ラインのため、完成には4日かかっており、当日受注対応は人によるオフラインで対応)。
⑤リモートメンテナンス機能により、予防・予知保全に加え、トラブル発生時の原因究明がどこからでもリモートで可能。
⑥画像処理技術による五感検査やバフ掛け等の自動化により、無人運転の拡大と品質安定化を実現。
(※ 従来、微細キズやバリ等の除去および検査は、人によるアナログで対応)。
⑦工具ID による工具管理(寿命・補正・搬送)自動化や、切削液集中管理等によりチョコ停を極限まで削減。
⑧工場は完全無窓工場で、年間を通して一定温度で管理されるため、品質の安定化が図られる。
(※ 完成工程(刃先仕上げ)は、恒温室で23℃±1℃で管理)。