「製造業の競争力強化に向け、これまで以上に支援」
●経済産業省製造産業局 産業機械課長 佐脇 紀代志
平成28年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
安倍政権が発足してから3年が経過しました。この間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題とし機動的に積み重ねてきた経済政策の結果、雇用・企業収益は改善し、それが消費・投資に結びつくという経済の「好循環」が生まれつつあります。
また、国際的な事業環境の面でも、行きすぎた円高の是正に続き、TPP協定の大筋合意がなされ、大きな弾みとなることが期待されます。TPP協定に参加する11か国に向けた工業製品輸出総額(約19兆円)の99.9%について関税が撤廃されるほか、ルール整備等の面で改善される項目も多々あり、国内で質の高いものづくりを行う我が国企業の海外への一層の飛躍に向け大きく貢献することが期待されます。
さらに、税制においては、昨年度に着手した成長志向の改革をさらに大胆に推進し、法人税率を29.97%にまで引き下げ、併せて、地域の中小企業による設備投資を支えるべく、史上初の固定資産税での設備投資減税も決定されました。
雇用・企業業績の着実な回復など、事業環境が改善しつつある今こそ、我が国製造業においては、設備、人材、イノベーションを含め、「未来への投資」をしっかりと行うことが重要です。経済産業省としても、昨秋、総理が表明された「希望を生み出す強い経済」の実現、とりわけ、我が国産業の稼ぎ頭である製造業の競争力強化に向け、これまで以上に支援してまいります。
企業の皆様には、政府の各種施策も活用しつつ、設備・技術・人材に対する未来に向けた投資に挑戦いただくことを期待します。また、活力ある企業のエネルギーを駆動力として、裾野広く日本経済全体の活性化へと着実に繋げていくことができるよう、賃上げや、取引先企業に対する仕入れ価格の上昇などを含め、社会と向き合うスマートな経営の実践に努めていただくことを改めてお願いします。
我が国は、少子高齢化の進展と、これに伴う人手不足に直面しており、特にものづくりの現場では生産性向上が強く求められております。こうした課題の解決策として、デジタルとリアルを融合させた新たな技術革新が大いに期待されており、とりわけ、その中核として、デジタル技術、メカトロ技術、人工知能等の総合力を詰め込んだロボットが注目されます。昨年は、安倍総理の下に設置した「ロボット革命実現会議」で「ロボット新戦略」を取りまとめ、2月には、日本経済再生本部において、これを政府方針として決定しました。また、5月にはこのロボット新戦略の推進母体として「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立されました。産業分野のみならず、農林水産、食品、医療・福祉、建設、社会インフラなどの様々な分野から産学官の意欲あるメンバーが参画し、地に足のついた多様な活動が展開されています。政府としては、この協議会と協働し、2020年までの5年間を「ロボット革命集中実行期間」と位置づけ、ロボットの市場規模を2.4兆円に拡大することを目標に、我が国を世界のロボットイノーベーション拠点とするロボット創出力の抜本強化、多様な分野でのロボットの利活用の促進、そして、ロボットを自律的に活用することを前提としたルールや国際標準の獲得・展開の3つを政策の柱として推進してまいります。
また、ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアル・インターネットなどに代表されるIoT等を活用した新たなものづくりへの動きが起きています。こうした動きを我が国でもチャンスととらえ、日本のものづくり力の飛躍につなげるべく、IoT等の新しい技術を活用し、生産性を高め、新たな収益源を創出する意欲的な取組を支援します。生産現場や経営の状態の見える化により、カイゼンが容易になるだけでなく、データを起点とした新たな製品やサービスの創出により、稼ぐ力の向上に貢献します。
産業機械課は、これからも皆さんの生の声を聞き、それを産業政策に反映させていきたいと思いますので、良いアイディアやお困り事があったら、気軽にお声を掛けてください。
最後になりましたが本年が皆様方にとって更なる飛躍の年となりますよう祈念いたしまして、新年の挨拶と代えさせていただきます。
「『機電再融合』の流れは、注目しなければならない環境変化と認識」
●日本機械工業連合会 会長 岡村 正
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
年頭に当たりまして、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご協力とご支援に対し、心から御礼を申し上げます。
2012年12月に安倍内閣が発足して3年間が経過しましたが、我が国経済は、アベノミクス効果の下で、着実な回復を続けてまいりました。リーマンショック後6,000円台にまで落ち込んだ株価も大幅な上昇を示し、企業体力の回復と雇用・所得の増加、研究開発やM&Aを含む企業の着実な投資拡大の「好循環」が生まれつつあります。
かつて六重苦といわれた超円高、自由貿易協定締結の遅れ、世界一高い法人税率などの課題に関して、円安への反転、TPPの大筋合意、そして「税収中立」という考え方が随伴した措置とはいえ、法人実効税率のドイツ並みの29%台への引き下げ、地球温暖化にかかるCOP(コップ)21における米国や中国等の参加した形でのプレッジ・アンド・レビュー方式への転換の実現と、これに先行してのエネルギー・ミックスをしっかり踏まえた約束草案の提出など、総理のリーダーシップと担当大臣をはじめとする関係省庁の交渉力や見識の発揮によって、ビジネス環境の改善が大きく図られつつあります。
目を今後に転じますと、消費税の再引き上げが来年4月に控えるなかで、今年こそ、我が国経済を中長期の成長軌道にしっかりと乗せていく年としなければならない、との思いを新たにするものであります。
政府は、アベノミクスの第二ステージとして、新・三本の矢をかかげ、人口減少社会という現実に向き合った成長戦略として社会政策的とも言うべき経済政策を第二、第三の矢をしてかかげるとともに、名目GDP600兆円の2020年頃の達成を目指し「希望を生み出す強い経済」を第一の矢として位置づけ、グローバル・バリューチェーンの構築、イノベーション・ナショナルシステムの構築、IoT・ビッグデータ・ロボット・人工知能による変革等を重視し、こうした課題について継続的な取組みを進めようとされております。
これらのいずれの課題をとってみても、政府の政策展開とともに産業サイドの積極的な取組みが、前進を図るうえで不可欠と考えます。機械産業に横串をいれた組織体である日機連と致しましても、こうした時代の動向を見据え、クオリティの高い活動に心がけて参りたいと考えております。
昨年の年頭所感において私は、世界的な製造業再評価の動きについて、機械と電気・電子の「機電再融合」とでも言うべき潮流として捉え、「機」「電」を横断する組織である日機連としてもこうした流れに対して積極的に取組んで行きたいという趣旨のご挨拶を申し上げました。その後、政府のイニシアティブの下で「ロボット新戦略」が取り纏められ、5月にはこれを受けて日機連が事務局を引き受け、IoT時代に即応したロボット新戦略の推進役として「ロボット革命イニシアティブ協議会」の発足を見ました。
その後の進展をご報告申し上げますと、226の会員の賛同を得て立ち上がった協議会は、現在では360を超えるところまで増加し、更に拡大中であります。各ワーキンググループも、毎回多数の企業等の参加のもと、回を重ねる毎に議論も活発化し、多くの前向きの提案が会員からなされるなど、組織的なプラットフォームの形成の段階から、次の発展のステージに移行する段階を迎えつつあるように感じております。これも会員の皆様並びに政府のご支援の御蔭であり、深く感謝申し上げる次第であります。
先に申し上げた『機電再融合』の流れは、機械産業の人材育成や確保の面においても注目しなければならない環境変化と認識しており、今後は日機連本体とロボット革命イニシアティブ協議会事務局が連携して政府のサポートもいただきながら、機電再融合時代の人材育成・確保のあり方について、検討を深めてまいりたいと考えております。
また、今年は日機連本体で経産省と共にこれまで進めてまいりました「ロボット大賞」事業の拡充を図る年であります。産業用ロボット以外の分野を含めた開発・普及の促進に向けて、積極的に取組んでまいります。
足元の景気動向は、中国を始め新興諸国の景気減速など世界経済の下振れリスクが高まるなか、一進一退ともいわれておりますが、私共が47の機械工業団体のご協力を得て、去る11月にまとめました機械工業生産額見通しの改訂調査では、平成27年度の国内機械生産額は、当初見通しの前年度比2.6%増から0.7%上方修正の前年度比プラス3.3%という結果が出ました。これは一部業種の下期を中心とした上方修正が背景となっておりますが、私どもとしては、この見通しが是非とも現実のものとなり、我が国経済全体としても今下期に着実な回復の動きを示すことを強く期待しているところであります。
皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、新春のご挨拶とさせていただきます。
「わが国経済の新たな成長へ」
●日本産業機械工業会 会長 佃 和夫
平成28年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気持ちも新たに新年を迎えられたことと思います。
昨年を振り返りますと、TPP交渉の大筋合意やCOP21パリ協定の採択など、世界に新たな風が吹きはじめました。日本経済については、7~9月期のGDP成長率(二次速報)が年率1%増と2四半期ぶりにプラスへ転じるなど、一部に持ち直しの動きがみられましたが、力強さを感じるまでには至りませんでした。
私ども産業機械の昨年の受注は、一昨年にロシア・東欧で超大型案件があった反動に加え、主力のアジア向けの落ち込みなどで外需が減少し、前年を下回る結果となりました。なお、内需については、製造業・非製造業ともに前年比プラスを維持いたしました。
本年につきましては、アジア新興諸国等の海外経済の先行き不安が続いており、わが国輸出の本格的な回復には今しばらく時間がかかるかと思われますが、平成28年度税制改正大綱には法人実効税率を20%台へ一年前倒しで引き下げることが盛り込まれ、減税効果が企業の設備投資をどのように押し上げていくのか期待されます。
こうした中、日本全体の成長力と活力を高め、今年をわが国経済の新たな成長への出発点とするためには、企業間・産業間の連携を一層強化し、生産性を向上させ付加価値を高めていく必要があります。その源泉のひとつとして、技術革新等のイノベーションが今まで以上に重要な役割を担っていくものと思われます。イノベーションの担い手としてベンチャー企業や中小企業の育成に取り組むとともに、オープン・イノベーションを推進し、革新的な技術の芽を企業の事業創造に迅速に結びつけていくなど、あらゆる産業が競争力強化に努め、市場拡大を実現していくことが求められます。
また、様々な分野において、ロボットやIoT、ビッグデータ、人工知能などの先端技術を取り入れ、生産性を向上させていくことが、我々製造業ばかりではなく社会全体の大きな課題であると考えます。併せて、わが国産業が高度なバリューチェーンを構築していくために、中小企業や地域経済がTPPを積極的に活用し、新たな成長へ繋げていくための取り組みを一層強化していくことが重要になると思われます。
我々産業機械業界も、成長力をさらに高めていくために、自らの構造改革にもう一段の努力を積み重ねていく必要があります。また、世界最高水準のエネルギー・環境保全分野に関する技術やサービスにさらに磨きをかけ、関連産業と連携しながら新たな市場を創造し、地球環境保全と力強い日本経済の実現に向け、引き続き貢献して参ります。
政府におかれましては、景気への一時的なカンフル剤にとどまらない成長戦略の強化策を打ち出し、中長期的な成長基盤の強化を図るとともに、わが国企業の高度な技術力でアジアの成長に貢献しつつ、日本経済の早期再生に弾みをつけていくため、新興諸国を中心に急拡大する社会インフラ市場の開拓や中小製造業の海外ビジネス活動の支援等、国際展開戦略を着実に実施していただくことを期待しております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。