超硬工具協会(理事長=増田照彦 三菱マテリアル 常務執行役員 加工事業カンパニープレジデント)と、日本工具工業会(理事長=堀 功 不二越 常務取締役)が1月8日、東京・丸の内の銀行倶楽部にて統合に向けた友好の第一弾として、合同で新年賀詞交歓会を開催した。超硬工具協会からは62社115名、日本工具工業会からは39社61名、来賓、OB、報道関係者を含めた総勢300人が出席し、親睦を深めた。
「メイドインジャパンのものづくり力を国内外に発信したい」
増田超硬工具協会理事長があいさつをした。この中で増田理事長は、「放っておくと惰性になりがちな日常に、新年は格別なリセットの仕掛けがある。まわりはなにも変わっていなくても気持ちを切り替えるだけで見える景色がまったく違う。人間がつくった仕掛けとしての新年は素晴らしいものだな、と思っている。目の前で展開しているすべてのことは、旅の途中でプロセスである。常にどんな状況であっても日々新たな喜びの朝、幸せの1日を迎えることができれば、その積み重ねで1年が繋がっていくと感じている。さて、疑問文のひとつとして、“何しに来たの”という言葉がある。この疑問文は時と場合によって意味合いが変化する。猪というのは国によって猪であったり豚であったりする。お酒は、百薬の長ともてはやされたり、命を削る艱難として毛嫌いされたりと、同じ言葉であっても使う人、聞く人、時代によっても意味合いが変わる。木へんの木と書いて右側に冊と書くと柵(サク)と読むが、この柵は“しがらみ”と読むんだ、ということを昨年知った。柵と(シガラミ)という言葉を耳にすると、断るに断れない、腐れ縁といったマイナスのフレーズが思い出されるが、その一方で、川では雨や風により大きな流木から橋を守るための上流の杭のことを“柵(サク)”というそうである。何でもないときは、柵は穏やかな流れの中で役に立たないでくの坊であるが、ところがひとたび嵐になると、木避けの杭になる。身体を張って橋を守るとても頼りになる陰の力となる。柵にとって橋を守っているプライド、橋げたからすると、柵の存在を承知して感謝している、お互い敬愛し合って生きているということであろうかと感じている。柵も橋げたもモノであるのにお互いに敬愛し合う気持ちで対峙している。まさに“モノに心あり まして人”ということだと思っている。新しい2015年はそういった橋の命を預かるんだ、という柵の気持ちで物事を進めたいと思っている。それぞれが備えを万全にし、流れる雲のごとく、自然体に天にも地にも我一人変わるものがないというプライドで取り組むとしたら、それぞれが大きな流れになっていくんだろう。本年6月には超硬工具協会の理事長として日本工具工業会様との統合をぜひとも実現したいと願っている。従来はハイス、超硬と刃先になる材料で組織を分けていたが、お客様にとってはどちらの材料も用途によっては必ず必要なものである。ふたつの会員各位が融合して学び合い、情報を補完し合い、日本ならではのこだわりをきめ細かく発揮できるのならば、メイドインジャパンのものづくり力を国内外に発信していけると思っている。大きなうねりを起こしたい。慌てることなく汗をかいて、また、汗を拭き取って、果てなき頂上を目指して共に一歩一歩向かっていきたい」と統合に向けて意欲を示した。
「機械工具産業は日本を支えているとても楽しい業界。世界に向けて情報発信を!」
続いて日本工具工業会を代表して堀理事長が、「増田理事長からお話しがあったとおり、今回初めて、日本工具工業会、超硬工具協会が合同で盛大な賀詞交歓会ができたのも両推進統合委員会をはじめとした関係各位のご努力のお陰だとこの場を借りて御礼を申し上げたい。私が工具工業会の理事長を引き受けた2013年の日本工具工業会の年間出荷高は約1000億円強だった。今年度の工業会の推定金額は1080億円を超えるとのことで、超硬工具協会と合わせると約4500億円という、統合すれば非常に大きな機械工具の工業会が誕生することになる。昨年の話をするとJIMTOF2014では16万人以上が来場した。私どももたくさんの新商品を世界に発信することができた。機械もかなり進歩しており、3Dの積層技術を紹介したり、すでに5軸の機械も当たり前になっている。日本の機械工具の工業会が世界の産業界をリードしていると情報発信出来たのではないか。統合を推進するに当たっては、情報発信力の強化が最も大きな目標になっている。ISOを牛耳っているのは残念ながらヨーロッパの企業が多いが、それに負けない力をつけていくことで、この統合が実現した際には、日本の産業界が一丸となって戦っていけると考えている。さて、日本の将来を考えることがよくある。私事だが、産学連携の一貫として大学で授業を持たせてもらっている。私の工具や人生35年間の話をしているが、彼らの目がどんどん輝きを増してくるのを強く感じる。機械工具の産業は『日本を支えている、とても楽しい業界』であるということを伝えたくて、私は一生懸命喋るわけだが、それに応えて若者の目が輝いてくる。最近、大学教育の学力低下が懸念されているが、それは教える方に情熱があってこそ、うまく伝わるんだ、と強く感じている。自分たちがやってきたことをきちんと伝えて、この業界は非常に魅力があるということを伝えきらないと日本の産業界を支える我々に将来はないと思うので、統合したあかつきにはそれらの魅力を十分発揮できる工業会になれればいいなと思っている。未年の未は未熟の未だが、将来大きくなった工業会で世界に情報発信ができるよう大きく成長することを祈念している」と期待を込めたあいさつをした。
「成長戦略のためにはエンジンの積み替え作業が大切」
来賓を代表して佐脇紀代志 経済産業省 製造産業局 産業機械課長が、「経済の好循環が本格化し、さらに全国津々浦々、この果実を実感頂けるよう方針に従って全力をあげていきたい。課題も多く、デフレの脱却については本格的に力強く道筋をつけることや消費についてももう少しの取り組みも必要であると感じている。今年はエネルギーが注目を浴びる年。最高水準の安全性を確保した原発の再稼働、地球温暖化対策も話題が沸騰している。環境問題といえばこの業界ではコバルト問題のように克服すべき問題もまだ残ってはいるが、私どもも皆様のご商売にとっていい方向にいくよういろんな仕組みをもって引き続き協力していきたい。宮沢大臣が年頭所感で示していたアベノミクス第三の矢は成長戦略のためのエンジンの積み替え作業であるという話をされている。薄利多売から利益があがるビジネスの仕組みをどうつくるか、という改革をしながら本筋を見据えてしっかり前に進むと壁もあるかもしれないが、政府としてもいろんな壁を取り払うことも必要だと思っている。安倍総理も年頭所感で“今年は日本の将来を見据えた改革断行の1年”にしたいとしていた。私どもも様々な改革を進めていきたく、また、新しいものに向けてエンジンを積み替える作業も大切だと感じている。新しい成長力を蓄える時期だからこそ、行政としてはなんとか先を見据えた課題を地に足のついた会話を重ねながら皆様方に協力していきたい」とあいさつをした。
石川則男 日本工具工業会副理事長(オーエスジー社長)が乾杯の発声を行った。