「製造業から日本経済の再生を」
●経済産業省製造産業局 産業機械課長 佐脇 紀代志
平成27年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
安倍政権が発足してから2年が経過し、アベノミクスの「三本の矢」により経済の好循環が生まれ始めております。こうした動きを一過性のものに終わらせず、持続的な成長軌道につなげていくために、引き続き、成長戦略を推し進め、製造業から日本経済の再生を成し遂げていきたいと思います。
我が国は世界に先駆けて少子高齢化が進展し生産年齢人口が減少するなど、まさに課題先進国であり、世界中の国々から日本が如何に対処するのか注目を集めています。実際に、ものづくり現場においても人手不足の顕在化や生産現場の作業負荷などの課題に対して有効な手段を講じていくことが急務となっております。こうした課題解決の切り札として、ロボットが注目されています。人手不足やサービス部門の生産性向上を図るためにロボットを活用するとともに、これを梃子に裾野の広い機械産業の更なる成長へとつなげていきたいと考えています。現在、安倍総理の下に、有識者からなる「ロボット革命実現会議」を設置し、日本をロボットが牽引するイノベーションの拠点とするための戦略づくりを進めています。ロボット未活用分野への導入支援、現場ニーズに即応した市場化技術開発、次世代のロボット技術開発を進めながら、並行して規制緩和、必要な安全規制の構築、標準化の推進など必要な環境整備を実施してまいります。
また、中長期的に国内市場の縮小が見込まれる中、我が国経済の牽引役となり、グローバルに活躍できる多様な企業群を継続的に生み出していくことが重要です。経済産業省としても引き続き、地域経済を支えながら、国際的にも高いシェアを保持するグローバルニッチトップ(GNT)企業を支援していきます。
併せて、我が国企業の海外展開を支援し、最先端のインフラシステム輸出を後押しし成長著しい新興国市場の獲得に向け、日本の優れた技術を世界に提供してまいります。産業機械課としても、世界最高水準の発電効率を誇る日本製石炭火力発電の輸出を推進してまいります。
さらに、法人税を成長志向型の構造に変革していく必要があります。実質的な法人税負担でみると日本企業の税負担は約30%と諸外国の企業より10%以上高い税負担となっています。数年で法人税を20%台まで下げるなど、高付加価値拠点・競争力確保に取り組んでまいります。
産業機械課は、これからも皆さんの生の声を聞き、それを産業政策に反映させていきたいと思いますので、良いアイディアやお困り事があったら、気軽にお声を掛けてください。
最後になりましたが本年が皆様方にとって更なる飛躍の年となりますよう祈念いたしまして、新年の挨拶と代えさせていただきます。
「成長戦略の力強い前進の年」
●日本機械工業連合会 会長 岡村 正
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
年頭に当たりまして、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご協力とご支援に対し、心から御礼を申し上げます。
我が国経済は、アベノミクス効果の下で、株価の上昇、雇用の回復など、この2年間に亘って大幅な改善が示されてまいりました。振り返ってみますと、我が国製造業は、とりわけ2008年9月のリーマンショック以降、グローバル市場の急激かつ大幅な変動、超円高、東日本大震災やタイの洪水による2度に亘るサプライチェーンの大きな混乱など幾多の困難に直面してまいりました。
この間、企業にあってはコストの削減を含めてグローバル企業としての競争力の回復に必死で取組むなかで、政府にあっては安倍政権の下でデフレ脱却に向けた力強い政策展開がこの2年間において図られ、企業経営にたずさわる者としてもここに至ってようやく愁眉を開くことができ、総じて明るい表情でお正月を迎えることができたのではないかと感じております。政策当局の皆様のご尽力に対して心から感謝の意を表するものであります。
しかしながら、いわゆる六重苦といわれた問題の全てが解決したわけではありません。新しく迎えた本年2015年は、こうした残された課題に官民挙げて取り組み、中長期の成長につなげる「成長戦略の力強い前進の年」に是非ともしたいものであります。
いくつかの課題について申し上げますと、まず第一に、足元の景気動向があります。昨年7-9月期の実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナスとなるなどの動きの背景に、耐久消費財を中心とした需要回復の遅れがあります。日機連が11月にまとめました我が国機械工業全体の改訂生産額見通しにおきましても、こうした動きのなかで、国内機械生産は、今年度僅かではありますが、マイナスの99.8.%が予想されております。これをなんとしてでも来年度に向けてプラスにもっていかねばならないわけであります。「地産地消」のなかで海外にシフトした生産を国内に戻すことはありえないとの見方もありますが、新たなビジネスの創出も含めて国内もの作りの再構築と輸出力の強化が課題であります。航空機分野では、国産初のジェット旅客機「MRJ」がいよいよ初飛行を迎えます。このニュービジネスを必ず成功させるとの信念の下に、我々は一丸となってこの挑戦をサポートしてまいりたいものであります。
交通システムやエネルギープラントなどのインフラ・システムの輸出についても、現状10兆円から2020年には30兆円にまで引き上げようとの政府の戦略目標の下で、トップセールスを含めて官民一体となった取組みの更なる強化が求められております。また、自動運転車や燃料電池車をはじめとする自動車業界の取組み、世界的な工場の省力化需要の拡大や医療・介護などの新たな社会的需要を背景としたロボティックス分野での地平線の広がりなどは、その一つ一つが我が国経済の新たな成長につながるものと信じます。
今年の二つ目の課題は、エネルギー環境問題であります。本年末にパリで開催される「COP21」に向けて本年半ばまでには我が国としての目標を表明することも必要になってくるものと思われます。こうしたなか、東日本大震災以降、我が国では地球温暖化問題が忘れ去られた感すら致しますが、COP21に向けてもう一度この地球温暖化の問題を直視するなかで、そのための現実的選択として、省エネのもう一段の深掘りとともに、原子力の貢献を再評価する取組みを期待したいと思います。
三つ目の課題は、税制の国際的ハーモナイゼーションの問題であります。日機連においても他団体と連携して法人税野引下げ等の税制改革を要請してまいりました。暮れの自民党税制大綱において、法人税引下げに向けての一歩が踏み出されたわけでありますが、更なる取組みが必要であり、またOECDの「BEPS行動計画」の動きなどがあり、グローバル化と税制という視点から総合的な課題の把握と対応が政府、企業とものますます強く求められてきていると感じております。また、グローバル競争の激化のなかで、FTAやTPP交渉についても本年は是非大きな前進を期待したいものであります。
第四の課題は、世界的な製造業復権に向けた動きであります。ドイツが国家戦略として推進する「インダストリー4.0」では標準化に向けた取組みを中心にして自国に有利な展開を図ろうとする動きが如実に出てきており、米国もまたこれに対抗して官民上げた動きをはじめていると聞きます。これらの動きを総じて捉えれば、各国ともかつての「製造業離れ」から転じて「機電再融合」とでも言うべき形で製造業にリソースを集中させようという動きを顕在化させているということであり、また、政策的には「産業政策」の復権とでも言うべき共通現象であります。日機連においても昨年から調査研究を進めるとともに、この3月にはドイツにミッションを派遣し、ドイツ機械工業連盟(VDMA)とも意見交換を行う予定であります。この問題は、ICTと機械の融合というイノベーションの問題であるとともに企業の取引形態の変化にも波及する多面的、多層的な問題であり、政策当局ともよく連携を取らせていただき議論を進めてまいりたいと考えております。
日本機械工業連合会は、新たな時代の動向に適確に対応し、機械業界全体を横断するプラットフォーマーとしての役割を果たすべく、誠心誠意努力を続けてまいります。
皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、新春のご挨拶とさせていただきます。
「日本経済の力強い成長軌道への復帰を目指して」
●日本産業機械工業会 会長 佃 和夫
平成27年を迎えるに当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
皆様には、気持も新たに新年を迎えられたことと思います。
昨年を振り返りますと、日本人研究者3人のノーベル物理学賞受賞は大変喜ばしい出来事でしたが、2月の豪雪、8月の豪雨による広島市の土砂災害を始めとする夏の多雨・日照不足、9月の御嶽山噴火、12月の長野県北部地震など、異常気象や自然災害の多い一年でした。
景気については、消費増税後の需要低迷や輸出の伸び悩みなどを背景に、4-6月期と7-9月期のGDPが2期連続でマイナス成長となるなど、力強さに欠く状況にあったかと思われます。
こうした中、平成27年10月に予定されていた消費税率10%への再増税が延期されたほか、経済政策の継続などを争点にした衆議院選挙が実施されるなど、慌ただしい年越しとなりました。12月24日に発足した第三次安倍内閣におかれましては、引き続き、経済最優先の政策運営に当たられますことを強く期待したいと思います。
私ども産業機械業界の昨年の受注は、海外で発電プラントや化学プラントを複数受注するなど、外需の持ち直しの動きが続いたことから、2年ぶりに5兆円台まで回復する見込みとなりました。なお、内需については非製造業と官公需の増加により前年を上回る見込みですが、肝心の製造業からの受注は横ばい圏内は維持したものの、業種によって増減が入り混じるなど、回復力に力強さを感じる状況ではありませんでした。
今年は、日本経済が持続的な成長を遂げるための、まさに分岐点であり、政・官・民があらゆる政策や対策を総動員し、力強い成長軌道に復帰できるよう、積極的に行動すべき重要な一年になると思われます。
我々産業機械業界も、成長のけん引役である製造業の一員という強い認識を持って、自己革新に取り組んでいきたいと思います。また、あらゆる産業の生産財と社会インフラ設備を提供する縁の下の力持ちとして、わが国産業の競争力強化や安心・安全社会の構築、震災復興の加速に向け、より多くの役割が果たせるよう、技術力や開発力のみならず、グローバルな環境変化に応じて製品・サービスを提供できる体制整備や仕組みづくりなどに、一層努力していく必要があると考えます。
同時に、産業機械業界の持つ世界最高水準のエネルギー・環境分野の技術やサービスなどを活かして、世界各国のエネルギー効率の改善や低炭素化・省資源化などへの取り組みに積極的に協力していくことで、地球規模での温暖化防止と循環型社会の構築に貢献していきます。
政府におかれましては、急激な円安に苦しむ中小企業に対する経営支援はもとより、法人実効税率の大胆な引き下げや、雇用などの規制改革の強化、安全性の確認された原子力発電所の再稼働によるエネルギーコストの引き下げ、TPPなどの経済連携交渉の推進、官民連携によるインフラ輸出の推進など、効果的な経済対策と実効性のある成長戦略により、民間が活力を発揮できる事業環境の整備に取り組んでいただきたいと思います。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますと共に、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。