ダイジェット工業(社長=生悦住 歩氏)の新素材の「サーメタル」が好評だ。
超硬合金といえば硬くて耐摩耗性に優れているので、切削工具や金型などに採用される重要な材料だが、希少金属のタングステンは高値で取引され、超硬=高価である――という側面を持っている。同社では、超硬合金やセラミックスと同じ硬さと耐摩耗性を誇る材料があれば製造現場のコスト削減に貢献できるとして「サーメタル」を開発しており、最近ではコバルトやタングステンといったレアメタルを使用しない「サーメタル」を用いたダイスで金型を量産することに成功している。
「サーメタル」とは硬質材料として炭窒化チタン(TiCN)を主原料とし、金属結合相にて焼結した材料で、W・Wo を含まない新しい工具材料だ。
注目すべき点は、HV硬さ13.8GPa、破壊靭性値12.5MPa、抗折力2.3GPa(CT510)と超硬合金D2と同レベルで超硬合金、セラミックスと同じレベルであること。耐摩耗性と耐欠損性のバランスも良い工具材料だ。また、ステンレスハガネやアルミニウム合金との摩擦が低く、焼付きの発生を抑制する。900℃の大気中においても耐酸化性を維持し、高温条件でも安定使用が可能、不活性ガス雰囲気下で600℃を超えても硬さの急激な低下はみられない。炭窒化チタンが主成分であるから比重は5.8と超硬合金の1/3程度と非常に軽量なのも魅力である。低熱伝導であるから、恒温の被加工材の冷却を抑制し、セラミックスでは制作困難な複雑形状製品にも対応できる。
同社の「サーメタル」を用いたレアメタルレス金型だが、このほど燃料電池や車部品向けで一定の受注を確保したことから、今秋をめどに1億円強ほど投資し、量産するとしている。