日本工作機械工業会(会長=飯村幸生氏 東芝機械会長)が、5月31日、都内のホテルニューオータニで定時総会を開いた。
総会後の懇親会で飯村会長があいさつをした。この中で飯村会長は、「世界情勢を見みると、米中間の貿易摩擦や、北朝鮮、中東をはじめとする地政学的リスクの顕在化など、不安定な動きも強まっているが、国内外の工作機械需要については、非常に旺盛に推移をしている。工作機械産業を巡る市場環境は、今、地政学的な問題であるとか保護貿易の問題も含めて、好調ではあるが一方で、脆弱さを秘めた展開となっている。」とし、2017年度日工会の受注額については、「1兆7,804億円で、年度ベースで史上最高額を記録した。」と述べた。また、「2018年度は、2018年の年初来、この4月までの受注累計額が6,555億円となった。これを単純に3倍にすると1兆9,665億円となり、年初の見通しの1兆7,000億円を上回るハイペースで推移をしている。」と好調さを示した。
その一方で、部材の供給難について、「工作機械メーカーは、世界のものづくりの発展に貢献していくために、サプライヤーのと緊密に連携をして、ユーザーへの供給責任をしっかり果たしていかなければならない。できるだけの努力をしていく。」とした。
世界の工作機械産業を取り巻く環境については、「大きな変革期を迎えている。技術面では、IoTを含めた製造業のネットワーク化、スマートマシン、スマートファクトリー、スマートマニュファクチャリング、そしてIoT活用による効率の改善が言われ、加えて、自動車のEV化、CASEというキーワードで表されるように、様々な変化が自動車業界で起きている。航空機需要もその需要が顕在化をしている。先端医療分野の成長による難削材加工需要の増加などと同時に、国際競争の面では、東アジアでの技術レベルが向上している状況と思う。日本の工作機械メーカーは、このような環境変化をビジネスチャンスとして、国際競争を勝ち抜いていかなければならない。この中で、少子高齢化社会の進展に対応して、将来の技術革新を担う技術者や、優秀な技能者の確保・育成に努めていかなければならない。」と人材育成の重要さに触れ、「この数年間、日工会は、人材の確保・育成、生産性向上を軸とした需要喚起と設備投資の促進、産学官一体となった技術開発に次々と取り組んできた。この結果、業界の体質も大いに強化された。この中で工作機械業界が、インダストリー4.0や、わが国のConnected Industriesの構想に見るごとく、新たな情報化の時代に直面し、ものづくりと情報の融合化が、一段と急速に進展しつつある。」と述べた。
これらの状況を踏まえたうえで、「日工会としても、技術・情報・人材の一体的なレベルアップを図る、総合的な施策の展開が求められている。共有領域、協調領域、競争領域という3領域で捉えると、業界団体としての日工会は、業界に共通する、付加価値の高い情報の入手・展開とその高度化を図る共有領域と、共に知恵を出して汗を流す協調領域、この2つの深掘りをする役割を期待されている。」との認識を示したあと、「このプロセスにおいても工作機械に関連する素材や、他産業との情報交換や連携も、積極的に進めていかなければならない。」と考えを述べた。また、これらの取り組みを通じて、「業界各社が世界市場で戦い合う競争領域の環境整備を進めていく」とした。
日工会では、『工作機械ビジョン2020』で示された産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOFの発信力・求心力の強化、人材の確保・周知策の強化、この4ポイントを、各委員会が中心となって進めているが、飯村会長は、「4課題は当業界にとっては永遠の課題だが、すでに5年以上にわたって、日工会活動の中核を担うこととして取り組んできた。技術・情報・人材の一体的なレベルアップを図るべく、今年度のPDCAサイクルを回しながら、ビジョンに即した活動内容、現況の技術の変化に即した活動内容、海外の技術レベルのアップ等に即した内容で、この4課題を深化させていきたい」と意気込みを示した。
今年度はビッグイベントである『JIMTOF2018』の開催年だが、飯村会長は、「JIMTOF2018を、国際色豊かに、盛況裏に導かなければいけない。キーワードは“つなぐ”。世界トップの技術ショーとして、最先端の工作機械技術の製品を披露すべく、準備を進めているところだ。日工会としても、東新展示棟の有効活用をはじめ、会期中に実施する工作機械トップセミナーや、国際工作機械技術者会議、企画展示、海外業界等との来賓の方々の接遇などについて、万全を期して準備を進めていく。また日工会は、2021年に創立70周年を迎えるが、これに向けて、技術や需要構造、国際競争環境の変化に対応した、2020年におけるわが国工作機械産業の新たな展望を描いていかねばならないと考えている。技術面・情報面・人材面を統合した戦略施策の策定に向けて、本年度においては、IoT関連の技術動向や、自動車のEV化などの需要構造変化に関する情報収集を進め、もともとの施策に、旧施策に対するアペンディックスとして、新しい施策を付け加えるというキックオフを今年度始めていく。人材事業では、少子高齢化に対応した人材確保策の展開に加え、専門領域の多様化に対応した人材育成、研修事業の体制づくりを進めていく。」とした。
来賓を代表して、上田洋二 経済産業省大臣官房審議官が、「第四次産業革命が進んでいく中、人生100年時代に対応した人材育成、これについての在り方を産業界と共にしっかりと議論、検討して取り組んでいきたい。世界に目を向けると、通商関連は非常にグローバルに大きな動きがある。自由で公正な経済圏の推進は非常に重要な課題だ。日米間の新たな枠組みであるFFRでは、TPPが日米にとって最善であるという立場で議論を行っていく。昨年12月に大筋合意に至りました日EU・EPAについても関税撤廃や協定による大きな成果の実現のため、一日も早い署名に向けて引き続き努力をいたしますし、またTPP11についても早期発効を目指していく。」とあいさつをした